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第27話

「ねえ、あの人大丈夫?いっぱい怪我してるし……。」 「怪我は今日したわけじゃないんだけどね。ただすごく疲れてると思うから、そっとしておいてあげて。」 「うん、わかった……。」 「俺が見てるから、真帆は心配しなくても平気だよ。」 「うん……。そうだ、あとでココア作ってあげるね。……甘いもの苦手じゃないかな?」 「どうだろ。嵐山の目が覚めたら聞いておく。」 「うん。」 ―――女の子と、白金君の声……?  はっとして目を開けると、真っ白な天井が目に飛び込んできた。トイレで気を失ってからの記憶が丸ごとない。どうやってあの場を離れたのかも覚えていなかった。 ―――どこだろう、ここ……。  僕はふかふかの大きなベッドから体を起こし、がらんと広い部屋を見回してみる。部屋の広さも、調度品も、窓から見える景色も、明らかに僕の部屋のものではない。 ―――さっきの声、白金君だよね……? じゃあまさかここって、  その時、部屋のドアが開く。 「お、目が覚めた?」 「し、白金君……。」  人懐っこい笑顔を浮かべて部屋に入ってきたのは、案の定白金君だった。やっぱりここは白金君の部屋らしい。よく見るとベッド脇のソファに白金君の制服の上着がかけてあった。  白金君はベッドに腰を下ろし、僕の顔を覗き込む。 「体、平気?怠かったらまだ寝てていいんだよ?」 「へ、平気です!」 ―――本当はかなり怠いけど、これ以上白金君に迷惑をかけるわけにはいかない。  そう思ってベッドから出ようとすると、白金君に押し戻されてしまった。 「もう少し休んでなよ。もうちょっとしたら啓一も来るし。」 「で、でも……。」 「あ、そうだ、のど乾いてない?」 「え?あ、のど……。」  言われて初めて気が付いたけれど、たしかにのどがからからに乾いていた。考えてみればあれだけ喘いで汗をかいたんだから、のどだって乾くはずだ。 ―――そういえば、いっぱい汗かいたのに体べたべたしないな……。  不思議に思って自分の体を見下ろすと、僕は制服ではなくて見慣れない服を着ていた。 「あ、それ俺の服。」  白金君に言われ、僕は悲鳴をあげかける。 「え?!こ、これ、じゃ、じゃあ、あの、着替え……。」 「ごめん、勝手に着替えさせて、体拭いちゃった。かなり汗かいてたし、そのままにしてたら気持ち悪いだろうし、風邪ひいちゃうかと思って。」  淡々と言いながら僕にペットボトルの水を渡し、白金君はソファのほうを指さす。 「嵐山の制服はあっちに畳んであるから。ワイシャツは今乾燥機に入れてるところ。たぶんあと二十分もすれば乾くと思うよ。」 ―――待って、 あそこに畳まれたズボンがあるってことは……  怖くなって布団をめくると、僕はサイズの大きいスウェットを着ていた。白金君はそんな僕を見て苦笑いしながら言う。 「ごめん、ちょうどいいサイズの服がなくて。」 「い、いえ、それは、その……ありがとうございます……。」 ―――まさか裸を見られるなんて。 どうしよう、 こんな傷だらけの汚い体を見られるなんて……恥ずかしい……。 きっと白金君も「汚い」って思ったはずだ……。

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