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第44話
そんなことを思いながらちらっと白金君を見上げた時だった。僕はうっかり白金君と目を合わせてしまう。
「ん?」
にこっと笑って首を傾げる白金君は、僕の視線にとっくに気が付いていたみたいだった。
「い、いえ、あの……白金君はこんなふうに僕と放課後を過ごしてくれますけど、その、お、お友達とか大丈夫なんですか?」
「友達?嵐山だって友達じゃん。」
「え、えっと、その……か、彼女さんとかは……。」
「彼女?」
きょとんとした表情になった白金君は僕の言葉を確かめるようにこちらをじっと見てきた。僕はなんだか気恥ずかしくなって、白金君から目を逸らす。
「い、いえ、ちょっと気になって……。僕なんかに時間を割いていて大丈夫なのかなって……。」
「僕『なんか』はないだろー。俺は嵐山と過ごしたいから、こうやって嵐山のこと誘ってるのに。」
「す、すいません。」
「あははっ、謝ることじゃなけどさ。で、彼女だっけ?今はいないよ。」
「で、でも白金君モテそうです……。」
「えー?そんなことないけどなぁ。」
「で、でも……。」
「あ、もしかして、啓一からなにか聞いたとか?」
「え?あ、いえ、本郷君からはとくになにも……。」
「そう?あ、じゃあもしかして前に神田が言ってたことかな。『ふらふら遊んでる』みたいなこと言ってたもんね。」
「は、はあ……。」
白金君は苦笑いして、ポケットに手を突っ込んだ。そして僕の反応を確かめるように、ゆっくりと話し出す。
「夏希の言うことは半分正解で、半分外れ。たしかに、俺特定の相手を作るのは苦手なんだよね。だけど誰彼かまわず寝たりはしてないよ?そういう意味では『ふらふら遊んで』はいないかな。……まあ、前はセフレもいたけど。」
「セ、セフレですか……。」
「あ、でももちろん合意の上でだよ?それに何人もいたわけじゃないから。ただ『彼女』っていう呼び名で呼ぶにはちょっとちがった。」
「相手の人は……白金君と彼女になりたかったんじゃ……。」
「さあ、どうだろう。そのあたりはなにも話し合わずに関係解消しちゃったしね。向こうは年上だったから、ただのお遊びかもしれないし、俺のこと少しは本気で考えてくれてたかもしれない。今となっては分からないけど。」
―――年上の……セフレ……。
な、なんか、いけないこと聞いてるみたい……。
初めて聞いた白金君の話にどきどきしながら、僕はもうちょっと踏み込んだことを聞いてみたいという欲求に駆られていた。白金君ならあれこれ聞いても怒らないんじゃないかという打算も少なからずあったのかもしれない。とにかく、僕は自分でも珍しいと思うくらい積極的に質問をぶつけた。
「あ、あの、じゃあ、白金君はその人のことどう思ってたんですか?」
「う~ん……どう思ってたか……難しいなぁ。綺麗な人だったよ。美人で、あとスタイルがよかった。それに口数が少ないところもよかったかな。よく顔を出すクラブのイベントでたまたま出会って、なんとなくそういう関係になってたんだけど、なんていうか向こうもさばさばしてて居心地はよかったかな。」
「『好き』とはちがったんですか?」
「そうだね、『好き』とはちょっと違うかな。というか、『好き』の種類がちがったのかも。」
「なるほど……『好き』の種類……。」
「嵐山は?」
「え?」
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