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第3話

 銀髪の人は再び僕の顔をじっと眺め、それから唐突に言った。 「その制服、北高のだよね?」 「あ、はい。そうです。北高です。」 「頭いいとこだ。」 「蒼秀学園のほうが偏差値高いです……。」 「えー、そうだったー?でもあれじゃん、男子校仲間。」 「は、はい。」 「女子がいたほうが良かった?」 「え?あ……べつに、どちらでも……。」 「まあ、男子校は男子校で楽しいもんなぁ。野郎同士気兼ねなくつるめて。で、あっちにいる北高制服の三人組は君の友達かなにか?」  反射的に振り返りそうになって、僕はぎりぎりのところで踏みとどまった。 ―――「こっち向いたら殺す」って言われてるんだった。 「い、いえ……ち、ちがいます……知りません。」 「ふーん。でもあの三人さっきからずーっとこっち見てるよ?しかも三人で仲良く一つのスマホ覗き込んで。」 「ぼ、僕、知りません。あの、本当に、違うんです。」 「へえ、そっかぁ。」  含みのある相槌を打ったかと思った数秒後。銀髪の人の手がいきなり僕のポケットに伸びてきて、しまっておいたスマートフォンを引っ張り出した。 「や、やめてください!」 咄嗟に取り返そうとしたが、銀髪の人はスマートフォンを高々と掲げる。背の低い僕は背伸びをしても辛うじて銀髪の人の手首に届くくらいで、さらに高いところにあるスマートフォンには触れることもできなかった。 「返してください!」 「おっ、君おっきい声も出るんだね~。」 感心したように呟きながら、銀髪の人は画面に視線をやる。 ―――どうか見ないで……!  無駄なことだとは分かっていてもそう願わずにはいられない。そしてその願いは当たり前のように打ち破られた。  通話中の画面。通話時間は僕が声をかけてからの時間とほぼ同じ。それをじっと見つめ、銀髪に人は何も言わない。その沈黙が心底怖かった。息をするのもはばかられて、僕はできるだけ小さく小刻みに息を吸う。  僕のスマートフォンが銀髪に人の手に渡ったことは、どうやら僕らの様子を見ていた三人も気づいたらしい。横目で盗み見ると、彼らは大慌てでその場を立ち去ろうとしていた。ところが、それよりも早く銀髪の人がスマートフォンを耳にあて、朗らかに話しだす。 「お前らそこ離れたらぶっ飛ばすぞ~。」

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