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第10話

 白金君は僕の方に体を向け、顔を覗き込んでくる。 「もう一度聞くけど、その顔の怪我とか手首の傷はどうしたの?」  穏やかな白金君の声に背中を押されるようにして、僕は口を開いた。 「学校でいじめられてるんです。」 ―――あ、 こんなに簡単に言葉にできちゃうものなんだ。  そのことに気が付くと、僕の口はまるで堰を切ったかのように喋り出した。 「ゲイだってことがばれて、それで『気持ち悪い』って。中学生の時にも同じ理由で苛められてて、高校は家から遠いところを選んだんです。それでもいつの間にか噂が広まって、またいじめられるようになって……。しかもうちの学校男子校なので、『男漁りのためにこの学校にきたんだろう』って言われて……。殴られたり蹴られたり、そういう暴力を振るわれるのは日常茶飯事です。特別な理由がなくても目が会ったっていうだけで殴られます。白金君に声をかけたのも、やらないと殴るって脅されたからでした。」 白金君は眉間に皺を寄せて尋ねてきた。 「先生とか、親は?相談してないの?」 「先生たちは……見て見ぬふりです。一応進学校なので、そういう面倒事は嫌みたいです。親には心配をかけたくないので……言えません。」 「だけど大人の力も借りた方がいいよ。こんな怪我させられてるんだから。」 「だ、だけど……い、言えないことが……。」 「なに?万引きとかさせられた?」 「いえ…………あ、あの……あ……。」  口にするのが恥ずかしくて、情けなくて、言葉が途切れる。ガラス窓に映った自分の顔は笑えるほど真っ赤で、それがまたいたたまれなかった。  白金君は僕の背中をさすりながら言う。 「俺も啓一も何聞いても軽蔑したり馬鹿にしたりしないよ。もちろん、人に言いふらしたりもしない。だから喋っちゃいな。一人で溜めこむことないよ。」 「…………で、でも……。」 「大丈夫。ね?」  背中に触れる手の温もりのせいなのか、それともきらきら光る銀髪に見とれてしまったせいなのか、僕は言うつもりのなかったことを打ち明けるために口を開く。 「レイプ……されてるんです……。」

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