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第13話

 ファーストフード店を出て駅に向かう途中で、数人の北高生とすれ違った。彼らは僕が誰と歩いているかに気が付くと、総じて目を丸くする。白金君はそんな視線に気が付くと可笑しそうに言った。 「『意外な組み合わせ』って顔して見てる。」 「そ、それはそうですよ……。」 「そうかなぁ?」 「だ、だって……。」 「ん?」  言ってもいいものか迷ったが、勇気を出して言ってみる。 「白金君は北高でも有名なので……。色々な噂が流れてるんです。たぶんほとんど嘘ですけど。」 「噂?なになにー、教えて?」 「ヤクザの跡取りだとか……。」 「え?ヤクザ?あははは!俺が?ヤクザか~。あはは、俺、医者の家の子なんだけどなぁ。」 「え?そ、そうなんですか?」 「意外?」 「す、少し……。」 「あとは?他にも面白い噂ないの?」 「えっと……僕が聞いたことあるのは、気に入らない上級生を金属バットで殴ったっていう話と、いつも警棒持ち歩いているっていう話と、あと経験人数が三桁超えてるっていう話とかで……。」 「あははははっ!マジか~!俺そんなイメージなんだ?あははは!」  愉快そうに笑う白金君の隣で、本郷君も小さく噴き出していた。よほど可笑しいのか、白金君の目尻には涙が浮かんでいる。 「そんな簡単に人殴ったりしないって~。警棒なんて持ったことないし。あとは経験人数?三桁はいくらなんでも盛り過ぎでしょ。あー、笑った!そんなこと言われてるんだ、俺って。」 「あ、あの、でも……。」 「ん?」 「僕も……怖い人だと思ってましたけど……で、でも……あの…………きっと、白金君は僕が今まで出会った中で一番優しい人です。」  なけなしの勇気を振り絞って言いきった言葉は、白金君にとってかなり意外だったようだ。彼の朗らかな笑い声はぴたりと止み、元から大きな目が一層大きく丸くなる。 「優しいって、俺が?」 「は、はい。だって、僕のこと助けてくれたし……白金君は僕とはなんの関係もないのに、それでも話を聞いてくれたり、僕のことで怒ってくれたりして……。ほ、本郷君も、優しいと思います。」  それを聞いた白金君と本郷君は顔を見合わせ、なんとも言えない表情になった。そして白金君がこんなことを言った。 「たしかに初対面の相手にそういうことするっていうのは普通よりかは親切かもしれないけど、でも俺たちがしたこと自体は普通のことだよ?困ってる人がいたら、普通助けるじゃん。」 「そ、そんなに優しい人ばかりじゃないと思いますけど……。」 「なに、北高ってそんなに殺伐としてるの?」 「北高がというか、僕の身の回りはずっとそうだったので……。」 「初対面の相手はともかく、友達同士とかは?」 「友達、もうずっといないので……。」 「あ……なんかごめん。」 「あ、いえ、なんかこちらこそすいません……。」  しまった、という顔になって白金君は謝ってくる。 ― ――なにも白金君が悪いわけじゃないのに。 というか、まともに人付き合いできない僕が悪いよね……。 「ねえ、嵐山って本当に友達いないの?」  白金君の直球な言葉がぐさりと胸に刺さる。僕ができることと言えば、頷き返すことくらいだ。改めて言葉にすると、「友達がいない」ってなんだか惨めだ。  白金君は急に立ち止まったかと思うと、上半身を屈めて僕の顔を覗き込む。僕はいきなり近づいた顔にびっくりして後ずさった。 「っ、な、なんでしょう……?」 「友達、ならない?」 「へ?」 「俺と友達にならない?」 「ともだち……え?!僕と白金君がですか?」 「そう。俺結構友達思いのいいやつだよ?」

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