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第21話

 白金君のことをまだほとんど知らない僕が何を言っても、きっとそれは薄っぺらな「感想」にしかならない。僕が思う「白金君」と白金君本人が思う「白金君」は、僕が思っている以上にかけ離れているのかもしれなけれど、僕がそれをあれこれ詮索したところでどうしようもない。たぶん白金君だってよく知りもしない僕にあれこれ知られても迷惑なだけだろう。 ―――余計なことを言って「友達」をやめると言われてしまったら……。  僕はそれ以上必要のないことを言わないようにするため、急いで口をつぐんだ。  白金君は急に黙った僕を変に思ったのか、こちらを振り返る。僕は不自然に思われないようにと、慌てて身を屈めてヘアゴムをじっと見つめることにした。これなら、僕がただヘアゴムを真剣に吟味するために黙ったと思われるはず。  実際のところ白金君はそう思ってくれたみたいで、僕になにか言ってくることはなかった。そのかわり、僕の手元を興味津々と言った様子で覗き込んでくる。 ―――そ、そんな期待に満ちた目で見られても……。 「あ、あの…………。」 「嵐山はそれがいいと思う?」 「え?あ、いえ、これは、たまたま手に取っただけで……。」 「ねえ、それちょっと貸してみてよ。」 「こ、これですか?でも本当に僕深く考えずに手に取ったやつで……。」 「いいから。」  そう言った白金君は僕の手から銀の星の飾りがついたヘアゴムを取り、僕の髪に添える。そして真剣なまなざしでじっと見つめ、しばらくすると満足げに表情を緩めた。 「これいいね。」 「え?!う、うそ、だって、それは……あ、あの、もっとちゃんと選んであげたほうが……だ、だって、僕、それ、」 自分が適当に手にしたものがプレゼントとして採用されてしまいそうで、僕は思いとどまるようにと言葉を重ねた。しかし白金君はもう決めてしまったらしい。僕が何を言っても、にこにこ笑うだけで、考えを変える気はなさそうだ。 「し、白金君、あの、本当にそれは適当に選んだやつだから……し、白金君が選んだものの方が喜ぶと思いますし……。」 そう言ってはみたが、白金君は肩を竦めるだけだった。 「だけどこれいいじゃん。適当に選んだっていうけど、直観だって馬鹿にできないと思うよ?」 「で、でも……。」 「それに、俺も真帆も星のモチーフ好きだし。」 そう言いながら、白金君は横髪を耳にかけて耳たぶを指さす。そこには星の形をしたピアスがあった。 「ほ、ほんとだ……。」 思わず呟くと、白金君は人懐っこい笑顔を浮かべて「ね?」と同意を求めてくる。僕のセンスには全く自信がないけれど、銀色の星のピアスは白金君によく似合っていた。  白金君は僕に店の外で待っているようにと言い残し、レジのほうへ歩いて行った。レジで対応している女性店員さんと楽しそうに言葉を交わす様子を眺めながら、僕は自分の耳たぶに触れてみる。 ―――ピアスって、やっぱり開ける時は痛いのかなぁ。 殴られる時とどっちが痛いだろう?

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