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 ――な、なにを言っているんだこの彼は!?  たしかに、メッセージカードには綺麗な字で「朝霧さま」と書いてある。彼――暁……くん? はまさか本当に僕に一目惚れとやらをしたのだろうか。今の一瞬で? 一体僕のどこに? あまりにも突然で、わけがわからなくて、信じられないことが起こったからだろう。僕は腰が抜けてその場にへなへなと座り込んでしまった。そんな僕に暁くんは「あっ、朝霧さん! 大丈夫ですか……!?」と大きな声をかけてきて、対して眞希乃さん(そういえば一部始終を見られていたと今になって気付いた)は「まあまあ」とのんきにぼやいている。 「朝霧さん……! 立てますか?」 「あ、いや、だいじょうぶ、」  暁くんは僕の前にしゃがみこんで、手を差し伸べてくれた。この歳になって腰を抜かしてしまったことが恥ずかしくて、一刻も早く立ち上がりたかった僕は咄嗟に彼の手を掴んでしまったが――掴んで、後悔した。  ぐい、と手をひっぱりあげられて、なんとか立ち上がる。立ち上がった瞬間の、「やってしまった」感といったらなんと言えばいいのだろう。立ち上がるなりよろめいて、彼の胸にボスンと飛び込んでしまったのだ。さらに、しまったと顔をあげれば――至近距離で、彼の顔を覗きあげることになってしまった。 「あ、――……」  ばちり、と視線が交差する。彼の吐息を感じる。それくらいの距離だというのに、彼の顔が真っ赤に染まったことがわかった。そんな反応をされたのが初めてなので、僕は僕で戸惑ってしまって動けない。グッと顔が熱くなったのを感じた。もしかしたら、僕も彼のように顔が赤くなっているのだろうか。  ――ようやく先に動いたのは暁くんの方で、彼は顔を赤らめながらもゆっくりと一歩後退して、落ち着いた声で「すみません」と言ってきた。僕も彼の胸に突っ込んでいってしまったことを謝りたかったが、妙に気分が高揚して言葉が喉につっかえて出てこない。もう彼とは距離をとったというのに、瞼の裏で何度も何度も至近距離で見た彼の赤面がフラッシュバックしてしまうのだ。 「……びっくりさせて、すみません。信じてくれないかもしれませんが、……でも、俺、本気です」 「……、えっと、」 「――また、来ます。いえ、答えをくださいとかは言いません。迷惑はかけないので、……だから、また――来ます」 「く、来るのは、いいんだけど、……あの、僕」 「――なので、今日はこのへんで! あ、花束、ありがとうございます!」  僕が未だ頭を整理できない中で、暁くんはすぱっとお辞儀をして店を出て行ってしまった。結局僕は何も言葉を返すことができずに、ぼんやりと彼の背中を見送ることしかできなかったのだ。  一瞬にして静寂が帰ってきた店内の空気を感じて思う。ああ、――嵐が去っていったような気分だ、と。

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