7 / 106

「……なんか……すごい子だったな……」  例えるならば、夢のあと。非現実から帰ってきたときのような、夢見心地。暁くんとの会話が全て夢まぼろしだったのではないかと思えるくらいに、彼がここにいた時間は僕にとっては非日常だったが、僕の腕にぽんと乗っている白い薔薇の花束が「あの時間は現実だった」と言っている。  ぼんやりとしている僕の後ろで、くすくすと笑い声が聞こえた。振り向けば、眞希乃さんが楽しそうに微笑んでいる。 「まあ……玲維くんにもようやく新しい春がやってくるのねえ。あの子も喜ぶわ」 「い、いえ……眞希乃さん……彼、絶対僕をからかってますよ。だってあの赤い薔薇の花束……」 「ええ? でも、玲維くんに渡した花束にもちゃんと気持ちが籠っていたじゃない。それに、それくれた時の彼の表情、本当に素敵だったわ」 「……、でも。……そもそも、僕は……」  つい、彼の言葉を否定したくなる。けれど、たぶん、僕は。彼の言葉に嘘がないことに気付いている。――それを受け入れられないだけ。  眞希乃さんの優しい声色が、胸に沁みる。胸に抱いた、彼から貰った花束が、熱を持っているような錯覚を覚えた。

ともだちにシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

僕のセフレは、目隠しプレイが好きなんだ
44リアクション
10話 / 8,269文字 / 43
2017/10/9 更新
同じ区画に住む父親好きだったのに親子丼にしてしまった美青年の話。
5話 / 51,651文字
2018/3/1 更新
お人好し年下ゲイ×性悪ノンケ美人 美しいひとに振り回される恋
95リアクション
2話 / 8,597文字 / 486
2018/11/29 更新
ふたりで飲んだエスプレッソ。
27リアクション
1話 / 1,005文字 / 20
3/30 更新
「食飯未呀? 里中さん、元気出して」「一応有難いが、李さん、あんたみたいなオッサンに励まされてもな」
170リアクション
15話 / 27,734文字 / 0
11/19 更新
晴れて結ばれた水月と彰史の日常。
1話 / 459文字 / 0
11/11 更新