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「……なんか……すごい子だったな……」
例えるならば、夢のあと。非現実から帰ってきたときのような、夢見心地。暁くんとの会話が全て夢まぼろしだったのではないかと思えるくらいに、彼がここにいた時間は僕にとっては非日常だったが、僕の腕にぽんと乗っている白い薔薇の花束が「あの時間は現実だった」と言っている。
ぼんやりとしている僕の後ろで、くすくすと笑い声が聞こえた。振り向けば、眞希乃さんが楽しそうに微笑んでいる。
「まあ……玲維くんにもようやく新しい春がやってくるのねえ。あの子も喜ぶわ」
「い、いえ……眞希乃さん……彼、絶対僕をからかってますよ。だってあの赤い薔薇の花束……」
「ええ? でも、玲維くんに渡した花束にもちゃんと気持ちが籠っていたじゃない。それに、それくれた時の彼の表情、本当に素敵だったわ」
「……、でも。……そもそも、僕は……」
つい、彼の言葉を否定したくなる。けれど、たぶん、僕は。彼の言葉に嘘がないことに気付いている。――それを受け入れられないだけ。
眞希乃さんの優しい声色が、胸に沁みる。胸に抱いた、彼から貰った花束が、熱を持っているような錯覚を覚えた。
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