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東京の親戚は、腫物を扱うように僕に接してきた。けれどその時の僕は重ねられた嫌がらせに精神が疲弊しており、邪険にされないだけでもありがたく思った。むしろ、そこへ居させてくれるだけで感謝していた。学校は、フリースクールに通っていた。そこには様々な事情を抱えた子供が通っており、僕でもいじめられることはなかった。だから、僕を殺人犯の息子だと責める人もいなかったし、実家にいたときのように嫌がらせを受けることもなかった。
しかし、僕自身が僕を責めていた。何度も何度も嫌がらせを受けるうちに心を壊してしまっていた。「おまえは猟奇的殺人犯の息子だ」、そんな幻聴が常に聞こえてくるようだった。
無意識のうちに父の起こした殺人事件のことを調べて、その詳細を喰らってしまう。その残虐さに悍ましさを覚えて、そして自分にその血が流れているのだと自分自身を恐ろしく思う。毎晩のように人を殺す夢を見る。自分の血の色を確かめるようにリストカットを繰り返し、汚らわしい自分の中身を全て吐き出すかの如く嘔吐を繰り返し、自分を監視するかのように自分の部屋にビデオカメラを設置する。見かねた親戚が僕を病院に連れて行き、なんとかそういった行動は納まったが、自分への不信は止まらなかった。
「僕には殺人犯の血が流れている」――その意識から解放されることは、なかった。
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