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「ごめんね、ほとんど手伝えなくて」
「っていうか、朝霧さんはあっちで休んでてって言ったのに。意味ないじゃないですか」
「だって、楽しくて」
「……、そう? 楽しかった?」
「うん」
「――じゃあ、よかったです。とても」
お盆に料理を乗せてにこっと笑いかけてきた暁くんの笑顔が優しくて、面映ゆい。つい目を逸らしてしまえば、彼がへへっと声をあげて笑ったから、余計に顔が熱くなった。
眞希乃さんが待っている居間に料理を運んでいくと、眞希乃さんが笑顔で僕たちを迎えてくれる。眞希乃さんは料理を見て「まあ、素敵」と嬉しそうな声をあげていたが、その視線はすぐに僕へ向いた。眞希乃さんはじーっと僕を見つめてきて、目を細めてくる。見つめられることに些かの居心地の悪さを感じて誤魔化すように首を傾げれば、眞希乃さんはふっと噴き出した。
「楽しそうねえ、玲維くん。話し声がここまで聞こえてきたわよ」
「……そこまでですか?」
「ええ、あんなに楽しそうな玲維くんは久々だから、私、嬉しくなっちゃった」
「……そう、ですか」
眞希乃さんに言われて気付く。楽しい、とはっきりと思ったのは紋さんが亡くなって以来だ。眞希乃さんと共に穏やかな日常を過ごしてきて、それを不満に思ったことは特にないのだが、――ああ、そうだ、ここ最近はずっと「楽しい」なんて感じたことはなかった。
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