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 意識してしまって、僕がぎこちなくなっているのに気付いてしまったのだろうか。暁くんは会話を切り上げて、とりとめのないことを一人で語りだした。学校であった出来事とか、自分が勉強していることとか、僕が相槌を打つだけで済むようなことを延々と。年下である彼に気を使わせてしまったことを申し訳なく思ったが、正直なところ、ありがたかった。彼と会話をしていると、何故か辛くなってくるのだ。  気付けば、駅についていた。まだ電車は来ていなくて、しんとしている。 「次は~……えーと、……バイト忙しいし飲み会ばっかりだし……いつ行けるかなあ」 「……いつでもいいよ。来れそうな時で」 「うーん、わかりました! じゃあね、朝霧さん! また今度!」  眞希乃さんの家でも言っていたが、暁くんは忙しそうだ。この様子ならば、きっと自然と僕のことも忘れてくれるだろう。そう考えると、安堵する。  しかし、ぱっと手を振って笑った暁くんを見て、胸の中に隙間風が吹いてくるような感覚を覚えた。モノクロのフィルムを見ているときのような、カセットテープを聴いている時のような、……心をかりかりと引っ掻かれるような空洞が鳴く音。暁くんと過ごしたたった二日間の日々が僕の中でおかしいくらいに色鮮やかで、それが露のように消えてゆくことが、僕は…… 「――朝霧さん」 「……っ、」  ぼんやりとしていると、いつの間にか暁くんが僕の目の前に立っていた。彼は去るとばかり思っていたというのもあるが、彼が近づいてきたことにも気付かないくらい、僕はぼーっとしていたらしい。慌てて顔をあげれば――ふ、と頬に温かいものが触れた。  ――暁くんの、手のひらだった。

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