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 玄関から見える、地面を叩く大粒の雨。窓ガラスに映る僕の姿は不安気で、とても小さく見えた。自然と口から出た、彼が待つ駅の名は、たぶんあの窓ガラスに映る僕が行きたがっている場所なのだろう。捨てられた犬のような寂しい目をして、あの僕は彼に会いたがっていた。  しかし、会って、どうするのか。僕は彼に触れることなどできないのに、会って何をしたいのだろう。  会いたいと訴える僕自身を、僕は糾弾する。僕は彼を求めてはいけない、それをわかっているはずだ。それでも、きっと彼は待っている――その可能性(希望)が、僕を突き動かす。 『病院から××駅まで、三十分くらいかかりそうですけど、大丈夫ですか?』 「……三十分? なんでそんなにかかるんですか?」 『実は、病院を出たところの一本道で大きな事故がありまして……渋滞になっているんです』 「……」  タクシーを断って、受話器を置く。  僕は玄関を抜けて、大雨の降る外へ飛び出した。傘など持ってきていない、しかし走った方がタクシーを使うよりも早く駅に着く。  早く、彼のもとへいかなければ。  昏い闇の中、降り注ぐ冷たい雨粒。暗闇は、苦手なはずなのに。呑みこまれそうになる夜の色を、恐れていたはずなのに――今は、暁という名の彼のことしか、見えない。

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