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「僕は……紋さんのこと、愛していたよ、……本当に……好きだった。でも、……だからこそ、彼女が亡くなったことが、悲しかった。……ずっと、紋さんのことを考えていて……本当に彼女は僕と恋をして幸せだったのかって、悩むこともあったんだ……」 「……うん」 「……紋さんは、幸せだった。……そう、……よく、笑っていた。僕がプロポーズしたときは、涙を流して喜んでいた。……、ああ、そうだ、……紋さんは……幸せだった」 「うん」  紋さんの笑顔を思い出す。向日葵のようにまぶしくて、きれいで、大好きな笑顔だった。  ――私、れいくんと恋をして、すごく幸せ!  よく言っていた。彼女は、僕に「幸せだ」とよく言って聞かせた。あんなに笑って、あんなに幸せそうに僕に寄り添ってくれていた彼女を、僕は……今まで、否定していたのだ。  なんて、莫迦なことを。  なんて、哀しいことを。  暁くんの言葉で、僕は自分の愚かさに気付いた。そして、ぐっと突き落とされるように切なくなった。今まで紋さんの笑顔を踏みにじっていたという事実に気付き、あまりにも哀しくて、苦しかったのだ。 「――朝霧さん」  溢れる涙が、熱く頬を伝う。雨粒よりもきっと、たくさん頬を濡らしているのだろう。僕が泣いていると、さすがに暁くんも気付いたのだろうか。優しい声色に、面映ゆさを覚える。 「抱きしめて、いいですか」 「……え、」 「……寒いでしょ?」

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