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「朝霧さん」 「ん……」 「ちょっと、熱いね」 「うん……そうだね」  不思議な感覚だ。ここまで体温を溶け合わせることに抵抗を覚えないのはいつぶりだろう。仄かに胸の奥の方でザラザラとしたものが蠢いているが、それでもこうしてずっと抱きしめ合っていたいと思ったのは、久しぶりだった。だから、彼が離れていくことに寂しさを感じた。  彼から離れると、火照った体がまた冷えてゆく。雨はどうしても冷たくて、また、彼の胸にしがみつきたくなった。でも、「もう一度抱いて」と言う勇気はなくて、そしてもう一度彼に触れる勇気はもうなくて、僕はどうしたらいいのかわからなくなって俯く。心臓がどくどくと高鳴ったままで、息が苦しい。 「……いやあ、すっごい濡れちゃいましたね。電車乗るのちょっと恥ずかしいかも」 「あ、」  暁くんは少し照れくさそうに呟いた。そして僕はその言葉でハッとする。ここで待ち合わせをしたのは元々食事をする予定だったからだが、もう時間も時間な上にずぶ濡れで食事をするどころではない。明日のことを考えると、ここでお別れするのが賢明だった。  しかし、僕はここで彼と別れるのを惜しく思った。無性に、彼から離れたくなかった。  だから、言ってしまったのだ。 「……暁くん。今日、僕の家に泊まらない?」  

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