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 大切に飾っていた薔薇に気付かれた恥ずかしさから、僕は話を逸らしてしまう。とは言っても、ずっと気になっていたことだ。あの赤い薔薇を、暁くんは誰にあげたのかということ。彼にあの花束を売った店員としてあの花束の行方を知りたいし、そして何より、僕は彼に赤い薔薇の花束をもらったひとに嫉妬していた。彼の想いに応える覚悟もないくせに、嫉妬だけは一丁前にしてしまっていた。  自分の卑しさが嫌になる。しかし、知りたいという欲求はどうしても抑えることができず、問の撤回はしなかった。  暁くんはそんな僕を見て、少し困ったような顔をした。彼は少し寂し気な目をして、そして口元だけで笑って、「聞きたい?」と尋ねてくる。 「……言い辛いなら、大丈夫だよ」 「いえ、聞いてもらえるなら、聞いて欲しいんです。でも、朝霧さん……こんな話聞いても困るかなって」 「……暁くんが僕に聞いて欲しいなら、聞くよ。僕だってきみに身の上話をしているから」 「それもそうですね。じゃあ、これでフェアってことで」

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