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 にこ、と笑う暁くんの笑顔が、少し痛々しい。  本当は胸の中でぐるぐるとしている嫉妬をどうにかしたくて聞き出したいのに騙しているようで、申し訳なく思った。 「あの薔薇は……二年前に亡くなった彼女のお墓に、供えてきました」 「え」 「……彼女の名前は涼音っていいます。涼音は俺の幼馴染で、昔から俺のことが好きだったみたいでした。でも俺は……なんというか、なかなか涼音の魅力に気付けずにいて、彼女の想いを受け止めることができないでいました。俺はその間色んな人と付き合っていたから、結局涼音と付き合うことになったのは高校を卒業する時になりました。でも、俺、涼音のことすっごく好きになったんです。ずーっと俺のことを好きでいてくれた彼女が、本当に愛おしく感じて」 「……」 「涼音は、好きな人から薔薇の花束をもらうことが夢なんだって俺に教えてくれました。彼女のお母さんが、お父さんから告白された時に薔薇の花束をもらったんですって。私も親のような幸せな夫婦になりたいって、俺に言っていました。……俺、単純だから、涼音の誕生日に薔薇の花束をあげました。でも、そうしたら涼音は涙を流しながら喜んでくれた。俺、嬉しくて……毎年誕生日に薔薇の花束をあげようって思ったんです。その花束は、その時お金がなくて小さいやつだったから、年々大きくしていこうとかそんなこと思って」 「……うん、」 「……。……でも、彼女は亡くなりました。病気だったんです。結局、俺は彼女に一回しか薔薇の花束をあげることができなかった」  告げられた暁くんの過去に、僕は言葉が出なかった。まさか、暁くんのように明るい人が、大切な人を亡くした過去を持っているなんて夢にも思っていなかった。 「……それで。……その、」  暁くんは迷ったように僕から目を逸らす。何か言いたげで、それでも言い出すことをためらっているような……そんな様子だった。

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