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「……朝霧さん」
暁くんはひどく驚いたような表情をして、僕を見つめてきた。そして、いつものようにへらっと笑うと、するりと指を絡めてくる。
「……今でも、鈴音のことを思うと自分を責めたくなるんです。一人でいることが怖い夜もある。きっと、ずっと俺は悩み続けると思います。でも――俺、ずっとばかみたいに楽しそうでしょ? それって、朝霧さんのことが好きだからなんです。朝霧さんに恋をしていると、……楽しい」
「……、」
「矛盾していますよね。恋をしているから辛いのに、恋をしていることが楽しいって。でも、生きるなんてそんなことを繰り返しなんだろうなって思うんです。……きっと俺は永遠に悩みながら、貴方に恋をするんだろうなあ」
暁くんは繋いだ手を見つめながら、唇をぎゅっと噛んだ。嬉しそうな表情をしている。
「朝霧さんには、一目惚れだったって言ったでしょ? あれ、一目惚れしたのはあの時じゃなくて、一年前だったんです。たぶん朝霧さんは覚えていないと思いますけど……一年前にも、俺は朝霧さんのお店で薔薇の花束を買っています。そのとき、朝霧さんに一目惚れしました。でも、その時は告白できなかった。やっぱり……迷ったんです。俺が恋なんてしていいのかなって。でも、それから一年間……迷って、時々遠目で朝霧さんのことを見ては諦めきれなくて、……ずっと、どうしようか悩んで、……いつの間にか、また鈴音の誕生日がきて。薔薇の花束を買いに行った時、衝動的に告白しちゃいました」
「……え、一年前のことだったの!? ……ずっと好きだったってこと……?」
「はい。一年間、ずっと好きでした。でも、好きでいてよかった。告白できてよかった。朝霧さんと話すたびに……朝霧さんをもっと好きになりたいって思えるんです。それが、すごく……幸せで。今も、俺、こうして手を繋いでもらって……ああ、ほんと、やばい、……嬉しいです」
暁くんは頬を染めながら噛み締めるようにそんなことを言ってくれた。
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