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 背中から、暁くんの鼓動がいやというほどに伝わってくる。どくん、どくん、と彼の心臓が震えると共に、僕の体温が少しずつ上昇してゆく。体が汗ばんで、シャツが纏わりつくような感覚を覚えた。  顔が熱くなって、くらくらとしてくる。 「……朝霧さん、仕切り直ししていいですか」 「し、仕切り直し、とは」 「キス」  しかし、暁くんが少しいじけたような声でそんなことを尋ねてきたから、思わず「え」と声を出してしまった。 「朝霧さんのことすごく大切にしたいし、ムードも大切にしたいし……なんですけど、未遂で終わるのはキツいです、だからお願い、朝霧さん」 「わっ……わかった、わかったから、そのっ……ぐりぐりしないでくすぐったい」  暁くんは頭を僕の首元にぐりぐりと擦りつけて駄々をこねてきた。突然年下らしさをだしてきたものだから、僕は拍子抜けしてしまったらしい。もしゃもしゃと首のあたりをくすぐる暁くんの髪の毛の感触に笑いそうになった。しかし、耐えられなくなって、結局彼の腕を解いて拘束から逃げる。 「……、暁くん」  振り向けば、暁くんの表情を改めて見ることができた。暁くんは、ぶすっとした声からは考えられないくらいに……いっぱいいっぱいの顔をして、僕を見つめていた。少し意地になっているようなむっとした雰囲気はあったが、そんな彼の表情は新鮮で、反射的に可愛いと思ってしまう。  やはり、彼と目が合うと彼のことが好きだという気持ちで胸がいっぱいになる。ずくずくという臆病な胸の痛みを上回る、暁くんへの想いが僕の背中を押している。 「……しよう。……キス」 

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