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 暁くんが、は、と目を見開いた。 「僕は……きみと違って臆病者だから、まだ……きみと、進む勇気はない。でも――」  瞬きを繰り返す彼の手を、掴む。そしてゆっくりと持ち上げて、僕の左胸の上に置く。彼の暖かくて大きな手のひらにすっぽりと包まれて、心臓がどくんどくんと激しく高鳴ってゆく。手のひら越しに、この鼓動ははっきりと彼に伝わっているだろう。僕は彼の手のひらの上に自分の手のひらを重ねて、ぐっと胸に押し付けて――心臓で、彼に全てを告白する。 「あ、さぎりさん、」 「――きみと、同じ気持ちだよ。僕は、暁くんと、キスしたい。だから……しよ、暁くん」 「……ッ」  声が震える。立っていることが難しいくらいに、くらくらする。  暁くんはぎゅっと眉間にしわを寄せたかと思うと、は、と小さく吐息を零した。そっと僕の胸から手を離すと、両手で僕の顔をすくいあげるように持ち上げた。もう、目を逸らすことはできない。緊張で潤む視界で彼を見上げれば、彼の熱視線が僕を突き刺してくる。穿たれた僕の心臓が、切ないほどに痛む。呼吸もできないくらいに、苦しい。 「……いい? 朝霧さん……」 「はやく、して……暁くん」 「朝霧さん……好きです。……好き、です」  それからは、一瞬だった。暁くんが瞼を下ろした刹那に、僕は彼に唇を奪われていた。

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