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「ん……」  唇に熱が灯る。ゆるやかに、熱が融けてゆく。朝露(あさつゆ)のように。  唇の皮膚が触れ合うような、一瞬のキスだった。それでも、震える暁くんの手と、熱っぽい吐息、今にも泣きだしそうな瞳――唇が離れた瞬間の暁くんの表情はいっぱいいっぱいで、僕は胸がつまりそうになった。窒息しそうになった。 「朝霧さん……」  鼻先が触れ合う距離で、暁くんが僕の名を呼ぶ。掠れたその声は、僕の心臓を焼き切るほどに熱を帯びている。 「……好きです、……好きなんです……」  絞りだすように彼はそう言って、僕を掻き抱いた。彼の熱い体に閉じ込められると、このまま絞め殺されたいと思うくらいに胸が高鳴った。「暁くん、」彼の名を呼ぶだけでも肺が千切れてしまうくらいに、胸が痛かった。  彼の背中に、腕を回す。鼓動を重ねる。  ああ、きっとこのくらい熱ければ、胸に巣くう恐怖もいつか、燃えて、灰となる。

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