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夜の色を例えるならば、何色だろう。黒、灰色、それとも無色。冷たい闇のカーテンに囲われる感覚を、僕たちはずっと恐れてきた。
「朝霧さん、寒くない?」
「……寒くは、ないけど」
「俺、寒いです。隙間があると。……もっと寄っていいですか?」
「……いいよ」
「……抱きしめていい?」
「……うん」
夜には、色がある。その感覚を久しぶりに感じることができた。
一つのベッドで彼と身を寄せ合って寝ていると、虚ろな時間が過ぎてゆくだけの闇とはまるで違う、僕自身の呼吸を感じる温かな闇を感じることができる。ああ、生きている――そんなことを、思う。
「……寝るの、いやだなあ」
「どうして?」
「……こんなに幸せな夜が久々で。俺……夜が、苦手なんですよ、色々考えちゃうから。暗いのが怖くて、早く朝が来ないかなって怯えながら寝るんです。でも……今は、暗いのもいいなあって」
「……。」
「朝霧さんの呼吸とか、あったかさとか……明るい時よりも、感じることができるんです。それが、すごく……幸せ」
暁くんも同じことを考えていると知って、僕はじわじわと胸が熱くなってくるのを感じた。顔をあげれば、優しい目をした彼と目が合って、そっと頬を撫でられる。
「……愛しています、朝霧さん」
切なそうに微笑んだ彼の表情に、ぎゅ、と胸が締め付けられる。暁くんに愛されることが、こんなにも嬉しい。嬉しいと感じることができる自分がいる。自分が自分でないようで、苦しい。
暁くんが親指で僕の目じりを撫でてきた。つ、と生暖かい水が尾を引いたような感覚があった。今度は逆の目にキスを落とされて、僕は僕が泣いていたのだと気付く。
「暁くん……」
「はい」
「……口にも、して」
夜の色を例えるならば、何色だろう。白……暁くんが僕にくれた薔薇の花の色。金色……暁くんの笑顔のような太陽の色。青……明日の朝の空の色。たくさんの色が溢れてきて、決めることができない。
触れ合ったところから感じる彼の体温。夜の色。静かに響く鼓動が、僕の闇を染めてゆく。
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