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第三章~彼は誰時、レモンの花~
眞希乃さんがアムルーズに復帰したのは、入院した日からきっかり二週間後。退院してすぐのことだった。僕はもう少し休んでいてもいいと彼女に言ったのだが、あまり休んでばかりいると体力が衰えるとのことで、彼女はすぐにアムルーズに出てきた。すごいなあと思いつつも、あまり無理をされないように、今日の僕はいつも以上に気を引き締めて仕事に臨んでいた。
「こんにちはー! 眞希乃さんが退院したって聞いたので来ました!」
夕方になると、暁くんがアムルーズに訪れた。僕が昨夜、彼に電話で眞希乃さんの退院を伝えていたのだ。手元には花束があって、店に入ってくるなりそれを眞希乃さんに差し出す。
「退院おめでとうございます! よかった、元気そうで!」
「ありがとう、暁くん。可愛い花束ねえ」
「ここで買ってそのまま渡すのもいいかな~って思ったんですけど、なんか微妙かなって思ったので違うお店で買ってきました。……でもやっぱり、ここで買った方がよかったですか?」
眞希乃さんがにこにこと嬉しそうに笑っている。僕も作業が一通り片付いたので、そっと彼らの間に入っていった。
「暁くんがここで買ってくれれば、売り上げあがったんだけどなあ」
「朝霧さん! やっぱり、こっちで買った方がよかった!?」
「……まあ、僕も違う花屋で花束買ったけど」
「ですよね!」
暁くんが違う花屋で買ったという花束は、オレンジを基調にしたものだった。僕はピンク系の花束にしたので、被らなくてよかったと内心思う。
眞希乃さんは僕が暁くんと話しているところを見上げ、にこにこと笑う。ふふ、と小さく噴き出していたので「どうしましたか?」と聞いてみれば、
「随分と仲良くなったのねえ」
と感心したように彼女は言った。
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