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僕のアパートまでの道中、暁くんはいつもよりも少し口数が少なかったように思う。僕も先ほど見てしまった名刺ケースのことが頭の中を悶々と巡っていて、会話をしていても上の空だった。
アパートについても、あまり会話はなかった。上着を脱いでいる暁くんを凝視している自分に気付いて、僕は自分自身にため息をつく。変に、意識しすぎだ。でも、暁くんも妙に緊張している様子があって、そのせいか全く気にしないでいるということができない。
「朝霧さん、今日、先にシャワー借りてもいいですか?」
「え……うん、いいけど。珍しいね」
「うーん、ちょっと考え事しちゃって……もやもやするんです。スッキリしたくて」
「考え事?」
「あとで、話しますね。それより朝霧さん……」
「ん?」
しかし、やはり意識してしまうことも彼に失礼だと思って、僕は平静を装いながらクローゼットに上着をしまっていた。そうしていると、彼が僕に近づいてきて、ぎゅっと後ろから抱きしめてくる。
「……キス、していいですか」
掠れ声で、暁くんが僕の耳元で囁いた。低く、湿度の高い声。ぞく、と下腹部が震える感覚に、たまらず僕は体をこわばらせてしまう。突然、彼の声色が変わったものだから、言葉に詰まってしまったのだ。
「朝霧さん、」
「あっ……」
びく、と体が震えた。
首筋に、柔らかく熱っぽいものが触れ、ちゅ、と音が響く。
首に、キスをされたらしい。
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