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「……それは、」
「――あッ……」
ぞく、と下腹部が熱くなる。
暁くんは両手で僕の腰を掴み、そのままゆっくりと……服をめくりあげるようにして、手を上へと滑らせていった。少しずつ露わになっていく自分自身の体が視界に入って、かあっと顔が熱くなる。
「……脱がせてもいいってことですか?」
「……っ、」
「服で隠れるところにつけるなら……服、脱がさないと」
「……待って、……暁くん……」
顔が火照って、頭の中が真っ白になって。何か言葉を発しようしているのに、何も言葉が口から出てこない。ちら、と暁くんが持っていた名刺ケースのことを思い出し、いやでもこの先の行為を想像してしまう。
やはり、彼は、したいのだろうか。僕とセックスがしたいのだろうか。
「あ、暁くん――……」
でも、まだ……やっぱり、セックスが怖い。何が怖いのかもわからない。怖い。
でも、暁くんとなら……してみたい。
いろんな思いが僕の中でせめぎ合って、答えが出せない。黙り込んでしまって、早く答えを言わなければと気持ちだけが焦ってゆく。
「……朝霧さん」
静かな暁くんの声が、響く。暁くんが僕の体から手を離して、胸のあたりまでめくりあげられていた服がすとんと元に戻った。
「あ、暁くん……僕は、……――ん、」
――暁くんの気持ちに、応えられなかった。
焦って、振り向く。こんなにも僕を大切に思ってくれている彼に、哀しい想いをさせたくなかった。
しかし、せめて謝ろうとした僕の唇を、暁くんが塞ぐ。いつものように軽く触れるだけの優しいキスをして、にこっと柔らかく微笑んだ。
「……先、シャワー浴びてきますね」
「……うん」
暁くんが浴室に向かっていく。僕は腰が抜けてずるずるとその場に座り込んでしまった。
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