90 / 109

25

「……玲維くん、いつから暁くんと? なんにも教えてくれなかったじゃない」 「……、」  暁くんの背中を見送った眞希乃さんが僕に声をかけてくる。けれど、僕はその問に答えることができなかった。いつから、と問われて僕は言葉に詰まってしまったのだ。すっかり彼と親密になったつもりでいたけれど、僕は彼に何かを伝えたというわけでもないし、この関係に名前がついているわけでもない。  ああ、そうだ、僕は彼に与えられているだけだ。 「眞希乃さん……」 「うん?」 「……僕と暁くんって、……まだ何も、始まっていないんです……」  暁くんが、悩んでいる理由。それは、僕のせいでもあるのかもしれない。僕を好きになっていいのか、僕を好きでいていいのか――。彼はあんなに苦しんで、それでも僕に恋をしてくれているのに、僕は何も返さない。僕は憶病に震えているだけで、何もできていない。 「……玲維くん」  外から風が吹き込んでくる。花の香りが渦巻いて、微かに僕の髪を揺らす。  眞希乃さんが髪を耳にかけて、目を細めた。花の香りを纏った風にくすぐられた僕の胸に、彼女は優しく言う。 「始まっているから、悩んでいるんでしょう?」

ともだちにシェアしよう!