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「んっ……、ぁ、あっ……、」
いけない欲のように思う。今まで僕が恐れてきた欲だ。しかし僕はそれを抑えることはできなくて、たまらなくて、手を伸ばす。僕の胸元を愛撫する彼の頭を、背中を――そっと抱いて、「もっと……」と囀 ってしまう。
「朝霧さん――……」
「あッ……!? ぁ、んっ……」
「もっと俺にねだって」
「え、……ぁっ、あっ……」
彼は僕の懇願に応えて、僕に蜜を与えてきた。舌で乳首を包み込むようにしながら、きゅっ、ともう片方を指で摘ままれる。それでもまだ緩く、僕の一番いいところを彼は責めてこない。焦らされている、それはすぐにわかった。彼は僕の手を引いている。
じんじんと熱が熟 むような快感で肌の表面が茹 ち、くらくらしてくる。彼に迫られてこうして感じている自分自身が浅ましく思うのに、愛らしく思う。
果てのない欲が、僕を突き上げる。もっと彼が欲しくて、もっと彼に責められたくて、もっと彼と繋がりたくて。体の奥のほう、もっともっと底のほう。かたちのない場所が、暁くんを求めてやまない。このどうしようもない欲は、彼への気持ちからきているということくらいわかっている。だからこそ、怖いのだ。純粋な欲望だからこそ。理性のない獣であればよかったのにと願ってしまうほど。
「あ……」
「朝霧さん」
「あ、……あぁ……」
彼を抱く手が、震える。彼を求めて、彼を愛することへの恐怖が次々に湧いてくる。それなのに、彼のぎりぎり薄皮一枚を突き破ってこないような焦れったい愛撫に、僕は枯渇感を抱いている。
もっと欲しい、彼が欲しい。
「ほら、言ってみて。もっと、ってもう一回」
「ん、んん……、あ……」
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