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 彼の背を抱いた手に、少しだけ、力を込める。ぞくっとするほどに生々しい人間の肌の感触が手のひらに伝わってきた。汗ばんでいるというわけでもないがしっとりとしていて、滑らかで、温かい。  ――怖い。人が怖い。人に触れることが、どうしても怖い。 「あ、暁、くん……」  それでも、彼に触れていたい。もっと彼に触れられたい。もっと彼に蕩かしてほしいし、もっと彼に色んなところを責めてほしい。もっと彼の熱を感じてみたくてたまらない。 「もっと、……もっとして、暁くん……もっといっぱい、僕のこと、触って……」 「――……、」 「あっ……!?」  必死に、言葉を絞り出す。その瞬間――ゾクン、と痺れるような感覚で、僕の腰は跳ね上がる。今まで温かった刺激が、急激に激しくなった。 「あっ、あぁっ……あっ、待っ、……あぁっ、だめっ、そんな、急に、」  乳首を根元から吸われ、摘ままれて、頭が真っ白になった。この前もこうされて昇りつめてしまったから、きっと、彼は僕がこうされるとだめになってしまうとわかってしまったのだろう。ここだけで善くなってしまうと、年上として情けなく感じてしまったり、女性のようで恥ずかしく感じてしまったり、切ない気持ちになってしまったり、複雑な感覚なのに、そんな感覚を組み伏せられて追い詰められてゆくことが、たまらなく、いい。 「あぁっ……あっ、だめっ……だめ……あぁっ……」  渦巻くような快感を逃がすように、しがみつくところを探して手が虚空を掻く。彼の背中にしがみつきたいのに、ぎゅっと掴むには少し距離があって、心もとない。どこを掴めばいいのかわからなくなって結局シーツを掴むと、少し寂しくて、彼の体に擦りつけるようにして腰が揺れる。 「あっ……」  そうしていると、彼が僕の左手をぎゅっと掴んできた。手のひらと手のひらをあわせるようにして、力強く。

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