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第8話

「へー。…誰?」 すぐに否定すれば良かった。しかし、そんな余裕今の香坂にあるわけがない。耳を優しく齧られて、乳首をぎゅっと強く摘まれた。 「あっ…」 「誰?」 首を振ると、正木の手は香坂の雄々しくそそり立ったものに伸びる。 ズボンの上から握られて、息が詰まった。 正木の手は香坂のベルトを外す。 「なっ…なに…を」 「香坂、誰が好きなの?」 ズボンはずらされて、下着もずらされる。その時を待っていたかというように香坂のものは弾かれるように外に出た。 心は焦って混乱ばかりしているのに、体は快楽を覚えて香坂のものの先からは耐えきれないように蜜が出てきている。そして、自分も男だから分かる、背中に感じる正木の熱。しかし、そのことを考える余裕など香坂にはない。 「教えてくれないの?」 好きな人…それは今背後にいるあなたです。そんな事は言えずにただ黙りとすることしか出来ない。 正木の指は香坂の蕾を探った。 「ひっ…!な…」 正木はソファーの近くにあった小物置きの中から何かを取り出し、手に取ったようだ。 再び、香坂の蕾に触れた。それは先程指に塗った何かでヒヤッとして、ビクリっと体を伸ばす。 「ただのワセリン。ジェルとか持ってねぇーし」 そういう事ではない。なぜそんな所をほぐしているのか。 「男同士ってここ使うんだろ?テーブルに手ぇつけよ」 「えっ…?」 「早く」 どうしよう。どうしよう。と思いながらも従うしか方法がない。テーブルに両手をついてお尻を上げた。 「ここにあいつのものも入れた?」 「…」 解されながら紡がれる質問に言葉が詰まる。しばらくの沈黙の後、こくりと頷いた。 「だろうな。バックが好きとか言ってたもんな」 そんな事を正木に言ったのか。 「えっ…違…」 「なんで俺がそんな事を初めてあった奴に教えてもらわなきゃならない訳?」 「んぐっ…」 正木の指は怒りと連動するように激しく、奥を突くように動く。 ワセリンのぐちゅという音が虚しく二人の間に響く。 虚しい。悲しい。それなのに興奮を抑えられない。 「なぁ…入れていい?」 入れる!?正木の物をここにという事だろうか。こんな状態で?犯されるように?ずっとずっと夢に見ていたけれど…先輩の本意では無いだろう。 お気に入りのおもちゃを取られて駄々を捏ねている子供のような正木にこのまま組み敷かれるのは嫌でブンブンと首を横に振った。 「嫌なの?あ…それもフリなんだっけ?」 ははと乾いたような笑いをひとつしたまま正木は己の物を香坂に押し付けた。 「誰が好きなの?言わないとこのまま入れちゃうけど…いいの?」 香坂は必死に首を振る。それが、嫌だという意思表示なのか、言わないという意思表示なのか香坂本人にも分からなかった。 正木はどちらととったのか、はたまたどちらでもいいのか、ぐっと腕に力をいれて香坂の体を押さえつけた。 「いやっ…待っ…」 香坂の抵抗虚しく、正木のものはずんっと香坂の体を貫いた。 「あっ…痛…っ」 生理的に出る涙。今までした中のどのセックスよりも痛くて、虚しくて、悲しかった。 それでも体は正木のものを受け入れようとする。痛いと悲鳴を上げるのにどこか気持ちいい場所を探す。 なにも考えないようにしたいのに、時々聞こえてくる正木の吐息や、感触が香坂を快感へ誘っていくのだ。 「入れられてこんなんなるの?」 どこか楽しそうに正木は後ろから香坂のものを掴んだ。そこは萎えることも無く、更にどんどんと熱を増してビクビクと蜜を垂らす。 正木の声と手に包まれれば更に反応する。 「好きでもない奴に入れられてこんなんなるとか…本当に淫乱だな。知らなかったわ」 正木は、ははは…と乾いた笑いを浮かべて香坂をがんがんと犯した。 「あっ…ち…違…」 考えることを辞めたくなるが、白濁とした頭の中でも必死に首を振った。 「誰でもいいんだ?誰にでもこんな反応するんだ?」 「違う…」 正木と香坂の関係はきっと変わってしまう。こんな事になっては今まで通りとはいかないだろう。だから…だからこそ。 「違わねーじゃん好きでもない相手にこんなんなってん…」 「違う!!!」 正木が言い終わる前に大きく否定した。こんなに大きな声を出したのは久しぶりだ。香坂の物を握っている正木の手を香坂はぎゅっと握った。 軽蔑されてもいい。嘲笑われてもいい。それでもこの気持ちは…こんなに好きな気持ちだけは否定されたくない。 「好きな人だから…こんな風に興奮してしまうんです」 勇気をだして紡いだ言葉。二人の間にぽとりと落ちていくような感覚だった。 「え…」 びくりと正木は動きを止めた。挿入されたまま奇妙な沈黙が流れた。 「まじで…?」 はっと息を飲むような様子がわかった。 その次に告げられた言葉は小さい声でただ一言。 「…最悪だ」

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