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第6話
***
「母さーん!!見て見て!100点とったあ!!」
「すごーい!晴麗は頭がいいなぁ。」
「父さんに教えてもらったんだ!あ、洗濯物するの?俺も手伝う!」
「ありがとう」
あの時、違う選択をしていたらきっと、晴麗はこんなに無邪気で優しい子には育っていなかったと思う。
「母さん、これ、どうやって掛けるの?」
「それはこうやって…」
「わかった!」
昔出て行った嫁に似て、可愛らしい顔をしているけれど、"哉太"が言うには、目元は俺とそっくりらしい。
「───ただいま。」
「あ!父さんだ!!」
洗濯物を放り投げ、ベランダから部屋に戻って行った晴麗に笑みが漏れる。
「父さん聞いて!俺ね、100点とった!」
「すごいな。今日はお祝いするか?」
「いいのー!?」
「いいよ。」
部屋の中から聞こえてくる声で、心が優しくなるのがわかる。すごく穏やかな気持ち。
洗濯物を終えて、部屋に入ると待っていたのは愛しい2人。
血は繋がってないけれど、2人の仕草とか、笑い方とか、雰囲気が何処と無く似ている。
そんな2人が俺を見て笑うから、何かあったのかなって不思議に思う。
「晴麗の100点のお祝いに、晩飯はハンバーグがいいって」
「ハンバーグ?普段から作ってるけど。もっと豪華なの頼めばいいのに。」
「母さんの料理の中で1番好きなんだ!ハンバーグがいい!お願い!」
「わかったわかった。いいよ」
そう返事をすると、哉太が「よかったな」って晴麗の頭を撫でた。
材料、あったっけ…?とキッチンに行く俺を追いかけてきた哉太が、冷蔵庫を開けようとした俺の後ろから手を伸ばし、ドアをおさえた。
「わっ、え、どうしたの…?」
「ただいま」
「あ…おかえり。ごめん、洗濯物してて忘れてた…」
「いいよ。」
くるりと振り返って、哉太にキスをする。
甘くて優しいキス。これが大好きで、もっと欲しくなる。
そして最近は、このキスを与えられる度に思うことがある。
「……好きだ」
「どうした、今日はデレ期か?」
「…そう言えば俺、哉太と暮らすって決めた時も、"好き"って伝えてなかったなって。」
「…あの時は俺が好きとか、そんな感情どころじゃなかっただろ。お前は追い詰められてたし。それに俺もあの時はお前にちゃんと気持ちを伝えられてない。」
思い返すと笑えてくる。確かに、あの時は家にいる晴麗との2人だけの世界に閉じこもっていたから、些細な事で傷付いていたんだ。
「哉太がいたから、晴麗が歩き出した時も、何とか持ち堪えれた気がする。」
「目を離したら何処へでも行ってたからな…。あれには苦労した」
くすくす笑った哉太が、まるで大切な物に触れるみたいに柔らかく俺の頬を撫でた。
「でも、こうやって晴麗が優しい子に育ってよかった。」
「うん」
本当に道を間違えないでよかった。
「…俺を家族にしてくれてありがとう。」
「違うよ。それは俺の言葉。」
顔を上げて、哉太をそっと抱き締める。それをいつからか見ていた晴麗が駆け寄ってきた。
「あー!俺も!母さんと父さんだけずるい!俺もギュッてして!」
「ああ」
哉太が晴麗を抱っこして、3人で抱きしめ合う。
「俺と晴麗を、哉太の家族にしてくれてありがとう。」
そうして、倖せになれた。
〜fin〜
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