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第3話

光の世話をするため、バイトは辞めた。大学に行っている時は、アパートの大家さんに見てもらうことにしている。もちろん、時雨は俺達の生活のため働いている。中卒でバカだから、なかなかバイトとして雇ってくれるところはなかったけれど。優しい酒屋のおっちゃんが、時雨を雇ってくれたのだ。 最初はさ、からのクラブを読んだりネットで調べたりすれば俺でも子育て出来ると思ったわけですよ。でも、本とかネットとかに書いていない行動をするのが子供であって。ハイハイを覚えてない分、光はまだ行動範囲が狭いから大丈夫だけど。これがもうハイハイを覚えてしまうと、俺ちゃんと育てられるのかなって思ってしまった。 「うわっ。またミルク吐いちゃった。蒼汰、どうしよう!」 「大丈夫だって。大家さんに聞いたけど、赤ん坊はよくミルクを吐くってさ」 「本当?俺の飲ませ方が下手なだけじゃなく?」 「そこは知らん」 時雨が光にミルクをあげている間、俺は自分達のごはんの準備をする。光のことでいろいろお金がかかるから、俺達のごはんはそこまで豪勢じゃない。白米と、味噌汁と、安く手に入ったほうれん草のおひたしと、卵焼き。最近毎日こればっかりだけど、光のことを思えば我慢できた。 「時雨、準備できたぞ」 「はーい」 「ミルク飲ませ終わった後、ゲップさせたか?」 「させた!」 「だったら寝かせて、俺達も食べよう」 「りょーかい」 大家さんに貰ったお古のベビーベッドに光を寝かせた時雨と一緒にごはんを食べる。時雨が出稼ぎに行っていてこの家にいない時は、いつも1人で食べていた。でも今は1人じゃない。時雨もいるし、光もいる。それが嬉しくてたまらない。 「蒼汰?何ニヤニヤしてんの?」 「してない。って、時雨。口の横にお弁当ついてる」 「えー、取って。もちろん、蒼汰の口で」 時雨が、フェロモン放出してそう言うからちょっとムラムラしてしまった。光の前で何ムラムラしてるんだ俺!って思うけど、最近時雨とはご無沙汰だから仕方がないと結論付けた。 光のママになったとはいえ、時雨とは恋人なんだ。大好きだし、ずっと一緒にいたいし。それはもう、大人なこともしたいわけで。 「ったく、しょうがねーな」 自分でも、照れてるって分かるぐらい頬を赤くして時雨に顔を近づけてお弁当を舐め取った。ついでに、キスも1つしてやった。 「ありがと」 「ん」 あぁ。今俺、本当に幸せだなってその瞬間思った。

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