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第4話

その日は、時雨が仕事で帰りが遅くなると連絡が来ていた。だから1人で光にミルクを飲ませて、お風呂にもいれてあげて、泣けばあやしてあげた。 いつもは、時雨と2人でやるからそこまで大変じゃなかった。でも、今日は全部1人でやったからか疲れてうとうとして、そして眠ってしまっていた。 “ふぇっ” 光の泣き声で目が覚めた。時計を見れば、1時間近く時間が経過していた。ヤバイと思いつつ、泣いている光をあやそうと向かって俺は異変に気づいた。 さっきまで元気だったはずの光の頬が真っ赤になっていて、そして苦しそうに泣いていた。 「ひかる?っ、ひかる!」 光に触れたら、熱くて。すぐに熱があると分かった。さっきまでは元気で、でも今は熱があって。咄嗟に光を抱き上げていて、そして俺はパニックになっていた。 光。そう何度名前を呼んでも、ただ苦しい泣き声をあげるだけ。いつもは嬉しそうに笑ってくれるのに。 俺のせいだ。俺が疲れて眠ってしまったから。 「蒼汰、光!ただいま~」 パニックになって、涙がこぼれた時だ。時雨が帰ってきた。夜なのに、迷惑になると分かっていても足音をたてて玄関に向かった。さぞ時雨は驚いただろう。泣きながら、俺が来たんだから。 案の定、時雨は目を見開いて驚いて、そして泣く俺を必死で泣き止ませようとした。 「しぐれっ。どうしよう、俺、光がっ」 「蒼汰! 泣いてないで、光がどうしたの!」 「顔熱くて、熱があって!でも俺、ねちゃって、ごめ、」 「今は謝らなくていいから、病院行こう!ちょっと遠いけど、夜でも開いてるから。ね」 そう言って時雨は、玄関に適当に放ってあった上着を俺に着せた。そして光にも暖かい格好をさせると、すぐにタクシーを呼んでくれた。 呼ばれてきたタクシーに乗って病院に向かう間、俺はずっと光を抱き締めていた。光はまだ苦しそうで。 「大丈夫だよ、蒼汰。赤ちゃんってよく熱出るんだろ?だったらそれは、蒼汰のせいじゃないって」 「でもっ」 「もしも、病院の先生とかがさ蒼汰のせいで光が熱を出したって言っても。俺はお前のせいじゃないって思ってる。もちろん光も」 「しぐれ、」 タクシーで移動中、時雨はずっと俺を慰めてくれていた。そんな時雨のおかげでちょっと元気を取り戻した頃、病院に着いた。慌ててタクシーを降りて、病院の中に駆け込んだ。 俺達の慌てっぷりに先生は驚いていたが、初めて子育てをする人にはよくあることだと後々から笑って教えてくれた。 そして、光の熱も大したことではないことにホッとした。これだとすぐに下がると先生に太鼓判も押してもらったし、もしものためにとシロップ薬も貰った。 「今日は、ほんとごめん」 家に帰りついて光を寝かせてから、俺は時雨に謝った。 「何が?」 「まぁ、いろいろと」 「何それ。謝ることなんて何ひとつないよ。それに、俺の方こそごめんね。今日早く帰れなくて」 「しょうがねーよ。仕事なんだし」 「しょうがなくないよ。子育ては、ママとパパ2人でするもんでしょ。俺だってバカだけど、光のパパですから」 「…………それもそうだな」 「まぁ、それ以前に蒼汰の恋人だからね。もっと俺に甘えてよ、蒼汰」 優しく俺を包み込むように時雨が抱き締めてくれた。時雨のぬくもりにホッとして、ちょっとだけ甘えたくなって。時雨の胸元に、そっと頭を擦り付けた。

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