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第5話
「準備はいいか?時雨に、光」
「おう」
「だ!」
安くで手に入れることに成功したベビーカーに光を乗せ、3人である場所を目の前にして意気込む。そう。ある場所と言うのが、子育てには必須の場所。公園だ。
ちらりと3人で公園を覗けば、チビッ子がキャッキャはしゃいでいた。それを、親御さん達が微笑ましそうに見ている。しかもその親御さん達は皆女性だった。
ヤバイ。そんな親御さん=女性=ママの中に、男3人組で入って。1人は赤ん坊だから、入ってよさげだけど。変な詮索されないだろうか。
って考え事をしていたら、いつの間にか時雨と光がいない。俺は、空っぽのベビーカーと一緒に、公園の入り口前で取り残されていた。
いつの間にかいなくなっていた時雨と光は、公園の中にいた。時雨は早速親御さん達と仲良くなってるし、光はアイドルになっている。
「こいつ、今日が公園デビューで。ママも来てるんだよな、光。ほら、蒼汰!こいよ」
ママが来てると言っておいて、男の名前を呼ぶな!ほら、親御さん達もえ?男がママ?的な目でこっち見てるでしょ。正直な話、俺もうそっちに行きたくないよ。でもさ、時雨と光が笑顔で俺を待っているんだ。行くしかない。
家を出る前、覚悟していたじゃないか。男同士の恋人の間に、赤ん坊がいたら。きっと変に思われるって。
でも俺は、光のために公園デビューを決めた。友達を今のうちから作っておけば、たぶん幼稚園に行っても心配はない。まだ先の話だが。
これは光のため。その為なら、自分達がバカにされてもいい。でも、俺達がバカにされたら光のためにならなくね?
「もう!蒼汰遅いよ」
時雨に呼ばれてもっと考え事をしていたら、しびれを切らしたらしい。気づけば手を引かれて、公園にいた親御さん達の前に立っていた。
親御さん達は、じっとこっちを見ている。バカにする気満々なんだ。バカにするだけじゃすまないかも。もしかしたら、軽蔑。いや、それ以上か。
そう考えていたけど、意外にも受け入れてもらえた。
「公園デビュー。そんなに怖いものじゃなかったね。ねー、光」
「あぅ」
「本当、母親の懐の深さには感心した」
「蒼汰も、そんなママになろうな」
「おぅ。頑張るわ」
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