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第2話
今日は日曜日。
そして――今は朝の4時44分になる少し前。
僕と録に目を合わせようとしない父さんは平日であれば仕事に行く準備をして、それから朝御飯だけは僕に作っておいてくれて――歯磨き等々の身支度をしている時間の筈―――。
でも、今日は日曜日。
父さんのお仕事は、お休みだ。
休日の父さんは――水分補給の時とトイレ以外の時は部屋から滅多に出てこない。こんな生活も――母さんが亡くなってからは当たり前になっていたの慣れきっていて特に何も感じない。
(早く……玄関まで行かなくちゃ……父さんは当てにならない―――)
とある理由で――部屋から出るのが憂鬱な僕だったが御客を無視する訳にはいかないと勇気を出して襖の方へと歩いて行くのだった。
『おやおや……情けない子だね、日向ちゃんは―――部屋から出るのさえ、そんなに怖いのかい?』
―――これは、とっくに亡くなった僕の祖母の声。
―――厚手の赤いカーテンの内側にある、もう一枚の薄いレース仕様のカーテンの隙間から火でドロリと溶け苦痛で歪みきった顔を半分だけ覗かせながら此方をジイッと穴が開いてしまう程に見つめてくる。
『ふふっ……きゃははっ……』
―――玄関前の鏡に映るのは、僕が勝手に笑子と名付けたおかっぱ姿の花飾りのピンを付けた女の子。一見すると、ただ笑うだけなので可愛らしいといえば可愛らしいが、決して鏡を直視しないようにしなくては――彼女のは声だけでは笑っているものの顔の全体を覆うように大きな黒い穴が開いている。以前、それを直視してしまい精神が半分壊れかけてしまい入院し、余計な金をかけさせるなと父さんにこっぴどく怒られてしまったからだ。
彼女達以外にも、この家には――というか、僕にしか見えないのだが――地縛霊、浮遊霊……あげくの果てに悪霊や色情霊など様々なモノ達がウヨウヨしている。
僕の部屋は、ある人がくれた結界で守られているが――部屋を一歩出るとそのモノ達が歓迎してくれる。全然、嬉しくなんてない。僕の母さんが亡くなったのも、父さんが僕に冷たくあたるのも、御客さんがこの家に最低限の用事以外は寄らなくなったのも、全てこの奇奇怪怪なモノ達のせいなのだから―――。
そんな事を悶々と心の中で思いながら――僕は憂鬱な気分で玄関の扉をあけるのだった。
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