5 / 276

第5話

「兄さん……兄さんが――俺の為に体も魂さえも差し出してくれるなら……ひなたには何もしない……でも、もしもそれが叶わないなら、可愛い――ひなたにも卑猥な事をしちゃうよ?ここはもう、俺の呪場だからね」 「じ、じゅば……?呪場とは……一体、何の事だ!?それより、さっさと私から離れろ――それに日向にも手を出すな!!」 「あははっ……日陰兄さんったら、この呪われた家で何十年も暮らしてきた癖に……そんな事すら分からないんだ?まあ、仕方ないか……兄さんは、ひなたと美桜さんのように……怪異なるモノが見えないもんね?」 と、昔の叔父さんとは別人のようにペラペラと話しながらも彼は父さんのはだけかけた着物の胸元の襟をぐっと力を込めて掴むと、そのまま肩下まで引き摺り下ろす。 父さんの象牙のように白く――滑らかで妖艶な肩が露になり、それと同時に空気に触れたせいで、ぷっくりと膨らんでいる桃色の突起までも晒される。 ちゅく、と厭らしい水音が――為す術なくその淫靡な光景を見つめる事しか出来ない僕の耳に無理やり入ってきた。そして、普段は決して表情を崩す事のない父さんが頬を赤く染めて半開きになった口から矯声をあげる姿も僕の目に無理やり飛び込んでくるのだ。 「や、止めてっ……日和叔父さん……止めて……」 「それは、どういう意味の止めてかな――ひなた……とりあえず黙って見てようね?」 すると、涙ぐみながら必死で叫ぶ僕の口に―――先ほどまで父さんが向かっていた机の方から得たいのしれない何か――黒いモノが僕の口元に向かって飛んできて、そのままキスをするかのように唇全体を強引に塞いでしまうのだ。

ともだちにシェアしよう!