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第10話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 僕が母さんが残してくれた数輪の大切な桜を守って涙ぐみながら叔父さんの体に抱きつきながら大方、泣き終わった後――そのまま父さんと逝き人形とやらのシャオリンが残っている部屋へと戻る。 すると、 何故か――其処には叔父さん曰く桜を守ったから直に消え去る筈だと言っていた【重魂者】とムスッとしながらソレを見つめる父さんと――その二人の険悪な様子にオロオロと慌てふためいている逝き人形のシャオリンが向かい合って畳の上に座っていた。 「ね、ねえ……日和叔父さん――どうするの……この状況――この人……いや、人じゃないか……ああ、ややこしい……全然、消える気配がないし……何でしれっと僕達の部屋で寛いでるわけ?しかも、日和叔父さんの姿から全然変わってないし」 【ん~……つれないな、ひなたは。それに、お前は好きだろ――この日和とかいうヤドリギの姿が――っ……】 ―――ぼすっ!! と、重魂者だったモノがヘラヘラと笑いながら僕をからかうと、その脇に座っていた父さんが鬼の形相を浮かべながら側にあった座布団をそのモノに向かって投げ付ける。 やはり、父さんは――仕方なくとはいえ本物の叔父さんが僕にキスしてきたのを見ていたらしい。おそらく、薄目で―――。 「…………重魂者――貴様、かなり低級霊を喰ったな?だから、成仏しないのだろう?」 【ん~……ああ、いっぱいね――というか、そう簡単に消えてたまるかってーの。これから、様々な怪異なるモノが沸き出てくんだろ?だったら、家族のこいつらにも――説明しといた方がいいんじゃねえの……じゃないと、俺のひなたちゃんと日陰兄さんが混乱しちまうじゃん?】 「……黙れ。貴様に言われなくとも――これから説明するさ……カサネ、お前は黙っていろ――これから貴様は俺の下僕だ」 ふと、日和叔父さんが――懐から何かを取り出す。それは、小説家が使うような万年筆で――それを左手に持った叔父さんはその鋭い筆先に唇をつけるとフッと息を吹き掛け――そのまま、空中にサラッと横線を描いた。 その横線が――風に野ってフヨフヨと漂いながら真っ直ぐにカサネと新たに叔父さんの口から呼ばれた重魂者に向かっていくと、鎖のように首に巻き付いてしまうのだった。

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