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第12話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「あれ……あれ、無いっ……叔父さんがくれた、うさぎの縫いぐるみが―――無い……」 「……不味い事になった――日向、俺があれをお前にくれてやったのはな……泣き止ませる為だけじゃなく、怪異なるモノ避けの為でもあったんだ。お前は日陰兄さんとは違って――そういうモノが見える質だったからな。あのウサギの縫いぐるみが無くなったとなると――カサネが言う通り、お前に悪意を持つモノ達がここぞとばかりに襲ってくるぞ」 ぐいっと叔父さんから半ば強引に腕を掴まれ――そして、部屋に戻ってきた僕は急いで叔父さんから貰った大事なウサギの縫いぐるみがある筈の場所を探したのだが、いくら探しても――ウサギの縫いぐるみは出て来ない。それどころか、最初から存在などしていないように忽然と消え去ってしまっていたのだ。 その後――昔、よく遊んでいた玩具箱をひっくり返してまで必死で探したのだが――やはり、ウサギの縫いぐるみは見当たらない。 「ど、どうしよう……叔父さん……僕、どうやってその怪異なるモノとやらから……身を守ればいいの?」 「―――仕方がない」 「…………?」 「―――こうなった以上、日向……俺がお前の側から離れる訳にはいかない。今日から此処で暮らす――気乗りはしないが、後で――日陰兄さんにも伝えておく」 それは――つまり、日和叔父さんが再びこの呪われた家で僕や父さんと共に暮らすということなのか――――。 「で、でも――そんな……そんな事、父さんが許す筈がないよっ……」 そのあまりの嬉しさから、思わず―――にんまり、と笑ってしまいそうになるがグッと堪えつつ――僕は叔父さんへと言う。 「―――何だ、そんなに俺と暮らすのが嫌なのか?」 「ち、ちっ……違うよ!!」 僕の顔は真っ赤になっていないだろうか、とそればかりが気になってしまう。だが、日和叔父さんはそんな僕の心配などお構い無しといわんばかりにフッと少し口角をあげて笑った。 「……心配するな、あの人は――息子のお前を見捨てるような事はしない。それは、俺がよく分かってる……あの人は、兄さんは本当は優しい人だから――」 【日陰兄さんが―――ずっと大好きだった】 ふと、先ほど――叔父さんの下僕・カサネになる前の重魂者が父さんを押し倒していた時に言っていた言葉を思い出して、【怪異なるモノ】や【ヤドリギ】などの件とは別に――僕の胸に引っ掛かっていたある事を叔父さんへと聞こうとおそるおそる口を開く。 「日和叔父さん―――叔父さんは――実の兄である父さんの事、どう思っているの?」 「…………」 ずるい叔父さんは――それについては、何も答ようとしてくれなかった。

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