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第16話

「……日向――お前が入院する前に鏡に映り込む向日葵を見た時――何かしなかったか?或いは、どんな感情を芽生えさせながら鏡を覗いていた?もしかしたら――これも、怪異なるモノの仕業かもしれない。そんな話を、昔――小説で書いたような記憶がある」 「え……で、でも――この笑……いや、向日葵さん――の件に関しては叔父さんの書いた小説とは関係ないんじゃないの……さっき、叔父さんが自分で言ってたじゃないか――」 もう、訳が分からない―――。 一度に色んな事が起こり過ぎて――頭の中がパンクしそうだ。しかし、そんな僕の間抜け面を一瞥すると叔父さんは心の底から呆れた表情を浮かべながら此方を見つめてきた。 (お前はアホなのか?少しは自分で考えてから物を言え――) と、父さんが僕を叱る時に言う台詞を言う時と似たような表情をしている。流石は――兄弟と言うべきなのだろうか。 「……いいか、日向――俺が言いたいのは小説には向日葵の存在そのものや、それを元にしたキャラクターは出てきてない――故に、向日葵の存在に関しては小説には関係していないと言った――だが、この鏡にまつわる怪異なるモノに関しては別だ。とにかく、お前が最初に向日葵を鏡の中で見た時に何をしたか、もしくは何を感じたのか言ってみてくれ――幸福を感じたりは――しなかったか?」 ペラ、ペラと――そして淡々と話す叔父さんの様子に翻弄されつつも――僕は必死で最初に鏡の中で笑子ちゃんを見た時の光景について思い出そうとする。 しかし、まるで頭の中全体を白い霧が覆ってしまっているかのように――全く思い出せないのだ。

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