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第21話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「――日向……日向、おい……起きろ!!」 【ヒナタさま――大丈夫ですか~?シャオリン達は、とてもとても心配したのです~……】 再び目を開けた僕の目に飛び込んできたのは、心配そうに僕の顔を覗き込む父さんとシャオリンの姿だった。ゆっくりと起き上がり、キョロキョロと辺りを見渡してみると――案の定、そこは風呂場などではなく父さんの部屋のままだった。 「――日和叔父さんと……カサネは?」 「ん……ああ、あいつらなら玄関前にある鏡に用があると言って部屋から出て行ったぞ?それよりも玄関の鏡にいるのは――俺の妹の向日葵なのか?」 「……多分、そうだよ。夢の中の日和叔父さんもそう言ってた――それよりも、鏡の中に閉じ込められてる笑――いや、向日葵叔母さんを助けないと!!父さんとシャオリンも一緒に来て!!」 ―――そして、僕達は急いで部屋から出ると、そのまま日和叔父さんとカサネがいる玄関前の鏡に向かって行くのだった。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「――駄目だ、まだ向日葵は……元に戻っていない。鏡の中に捕らえられたままだ」 僕達が慌てて玄関前の鏡の前に到着すると、ガックリと肩を下ろしている日和叔父さんとカサネの姿があった。 「そ、そんな……せっかく夢の中で……やってみたのに……」 「……日向、お前――夢の中で何かしたのか?」 「えっと……僕がしたのは夢の中にある鏡の前で――拍手したんだ。こうやって、普通に拍手を―――」 現実世界の玄関前にある鏡の前でも、夢の中にある風呂場の鏡でやってみた方法をしてみるのだが――やはり、向日葵叔母さんは元には戻らず顔に穴が開いたままなのだ。 「……おい、ひとつ言ってもいいか?それは――もしかして、反対なんじゃないか?」 と、ふいに―――何かを考え込んでいた父さんが少し遠慮がちに口を開く。 「は、反対……反対って……どういうこと?」 「―――日向、お前は馬鹿なのか――少しは物を考えてもみろ。昔、何かで見た事がある――普通の拍手のやり方は手のひら同士でやるが、手の甲でやる方法もあるらしい……だが、それは逆拍手といわれ――不吉といわれている。対象が鏡だから……普通の拍手ではなく、逆拍手でやればいいんではないか、と――そう言いたいんだ」 ―――結果的に言えば、その父さんの考えは間違っていなかった。あれから、僕は【幸せなら手を叩こう】を口ずさみながら普通の拍手ではなく逆拍手とやらを試してみたのだ。 ―――すると、【幸せなら手を叩こう】の歌を歌い終えた途端に――鏡の中の向日葵叔母さんに可愛らしい笑顔が戻り、本来の姿へと戻ったのだ。 【ありがとう――わたしの甥っこの―ー可愛い、日向……姿はなくとも、これからもこの家で見守ってるわーー日和兄さんと日陰兄さんの言う事をよく聞いて、二人を宜しく頼むわね……】 そう言い残し、【鏡の中の笑子ちゃん】は……いや、僕に会えなかった向日葵叔母さんは姿を消し去るのだった。

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