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第32話
―――あの副担任を名乗る男の人は、何と言った?
名前は、てるい……と言っていなかったか―――。
「ち、ちょっと……本当に大丈夫?何か、日向くん……今日はおかしいよ……もしかして、本当に具合が悪いの?」
「え、えっとさ……夢月――実は本当は……さっきから頭が痛くて……君、保健係だよね?一緒に着いてきてもらっても――いいかな?」
僕の方へと心配そうな顔を向けてくる優しい夢月に嘘をついてしまったが――ある意味、頭が痛いのは本当だとも言える。
一気に色々な事が起こり過ぎている――。
正直、頭がパンクしてしまいそうな程に――。
このまま、此処にいても周りのクラスメイト達を混乱させて迷惑をかけてしまうだけだ。それならば、親友である夢月だけに保健室で【怪異なるモノ】に狙われている、と告げてしまった方がいいのかもしれない―――と僕は思った。
それに、急に教室に現れた副担任を名乗る男の人の名前についても、夢月に聞いてハッキリと確認しておきたい。
―――そして、
「―――先生、木下日向くんが……頭が痛いようなので僕が保健室に連れて行ってもいいですか?」
「ん、それは、大変だね……保健室で休んでおいた方がいいよ……木ノ本先生――彼らを保健室に行かせても、大丈夫ですよね?」
心配そうな顔を向けてくれる夢月が、教壇に立っているカサネと副担任を名乗る男の人(てるい?)へと尋ねてくれた。すると、口を開きかけたカサネの前に副担任を名乗る男の人がやや強引に――だが、穏やかな口調と顔付きでカサネへと同意を求めてきた。すると、カサネが無言でコクッと頷いたため、隣にいる夢月が僕の手をグイッと引っ張ると――そのまま教室の扉へと歩いていく。
―――その時、
「……い……ま…………す」
夢月が、すれ違いざまにボソッと副担任を名乗る男の人に何かを囁いた気がしたのだが――僕の気のせいなのだろうか。
いや、もしかしたら――照れ屋な面がある夢月は彼にさりげなくお礼を言ったのかもしれない――全く夢月らしい、と僕は思うのだった。
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