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第33話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……あれ、保健の先生――いないね。まあ、いないなら仕方ないよね……ほら、早くベッドに横になって!!」
「ええっ……で、でもそんな勝手に……っ……」
――グイッ
「だって、保健の先生がいないんだからいいじゃん……こういう時は、ちゃんと休んだ方がいいんだよ……日向くん」
腕を半ば強引に引っ張られ、ベッドの方へと連れて来られた僕は夢月のマイペースさに困惑しつつも――心の中でこの場にいない保健の先生へと謝りながら、仕方なくベッドの上に腰を下ろした。
(夢月ってば……見かけによらず――意外と強引なんだから……保健の先生、勝手にベッドを使ってゴメンなさい)
と、そんな事を心の中でボーッと思っていた僕の手を夢月が掴むと、そのまま何を思ったか――別人のように大人っぽい表情を浮かべている幼なじみの彼から押し倒される。あまりに夢月から予想外の事をされてキョトンとしている僕の事などお構い無しに彼は僕の瞳をジッと見つめてくる。
「日向くん……僕さ、日向くんに言いたい事があるんだ。僕、僕ね……ずっと日向くんの事が―――」
「あ、あのさ……夢月……さっきの後から教室に入って来た男の人って……何て言ってたか覚えてる?」
――思わず、目を泳がせている僕から会話を遮られて怪訝そうな表情を夢月。
――そして、そんな夢月の怪訝そうな様子を見て動揺を隠しきれない僕。
「それ、照井先生が何て言ってたかって事だよね?日向くん、何でそんな事を僕に聞くの?」
「い、いや……ただ少し気になって―――ごめん、夢月」
(やっぱり、てるい……だ―――てるいって……どこかで―――そうだ、あのバスの中で乗客が言ってたんだ……じ、じゃあ……あの影法師の怪異は……あの男の人が……)
「ご、ごめん……それで、さっき夢月は僕に何て言おうとしたの?」
「えっ…………!?」
そう尋ねた途端に、夢月の顔が曇る。
何か聞いちゃいけない事を夢月に聞いてしまったのだろうか?
夢月は、唇をきゅっと結び、何も言わない。僕は、そんな彼の様子を見た気まずさから何も言えない。
決して広いとはいえない保健室の中に暫し、沈黙が流れる。
そんな時だった――。
この気まずい沈黙を破るかのように扉の外からノックの音が聞こえてきたのは――。
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