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第34話

―――ガラッ まだ、急に聞こえてきたノックに対して何も言葉をかけていないにも関わらず――ノックの主は、勢いよく扉を開けてきた。 その、余りの勝手さとマイペースぶりに、僕はてっきり担任として潜り込んでいるカサネが来たのだと思い込んだ。 周りのクラスメイト達やや小鈴という少年として潜り込んでいるシャオリンであれば――いくらなんでも、ノックしてから中にいる僕らに言葉くらいかけてくるだろう、と考えたからだ。 ―――しかし、それは僕の間違いだった。 「やあ、木下日向くん……だっけ?頭痛は、もう治ったのかな?」 「て、照井……先生?」 「じ、じゃあ……照井先生も来た事だし――僕、もう教室に戻るね……日向くん、お大事に!!」 と、彼は彼なりに気まずさを感じていたせいなのか――夢月は照井先生が入ってくるや否や、そそくさと保健室から出て行ってしまうのだった。 ――カツ、 ―――カツ、カツッ 照井先生の――硬い靴の音が静かな保健室に響く。 「うまい具合に……二人きりになれたね、木下日向くん?」 「え…………な、何をっ……!?」 ―――ドサッ!! 夢月が保健室から出て行って、しかも恐らく怪異なるモノを操って僕に危害を加えようとしていた張本人であろう照井先生が唐突に乱入してきたせいで、慌てて体を起こそうとした僕に気付いたのか彼は急いで此方へと近付いてきた。 そして、照井先生は低い声で僕の耳元で囁いた後でギシッと音をたてながらベッドへと座り込むと、そのまま力強く僕の両腕を頭の上で纏め上げて自由を奪ってから――あろう事か、そのまま勢いよく僕の体を押し倒してくるのだった。

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