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第38話

【でーんでんむし、むし……かーたつむり。おーまえのめーだまは……どーこにある。つのだせ、やりだせ……めだまーだせ……】 ――ぱち、ぱち 僕が御守りを握りしめた途端に、眩い光が放たれて――暗かった辺りを照らす。そして、怯えきっている僕を嘲笑うかのようにすぐ側にいた【影法師という怪異なるモノ】は、またしても手の甲を重ね合わせる逆拍手を行いながら、愉しげに【でんでん虫】の童謡を歌い始めるのだ。 ――ずり、ずりゅ…… ――ずっ……ずり…… 御守りから光が消え、再び真っ暗闇に支配されてしまった辺りから――何かが必死に這っているような不快な音が聞こえてくる。 「………ひ、ひぃっ……!!?」 半ズボンから伸びて剥き出しになった僕の両足をヌメヌメとした生き物――複数の【でんでん虫】が這い上がってくる。あまりの不快感と気持ち悪さかに思わず情けない声をあげてしまう。 複数の【でんでん虫】は、どんどんと恐怖で顔を歪めるしか出来ない僕の体を伝っていき、ついに頬にまで到達してしまう。 (ま、まさか……まさか――こいつら、僕の目玉を狙っているのか……歌の通りに……は、早く……こいつらを振り払わないと……そ、そんな……体が……まるでお地蔵さんみたいに……動かない……) ――体全体が動かない。 以前に経験した事のある怪異なるモノの仕業――【金縛り】だ。おそらく、これも【影法師】の仕業なのだろう。 まさに絶体絶命――といった時、 【日向ちゃん――歌だ、お前も童謡を歌え!!】 何処からか、カサネの慌てているような声が聞こえてくるのだった。

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