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第40話

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 「……何だ、日向……お前――元気がないな?もしかして、学校でなにかあったのか?」 「えっ……そうかな?」 ―――その日の夕飯は、父さんが仕事で遅くなるため――僕、日和叔父さん、カサネ、シャオリンの四人で食べる事となった。【怪異なるモノ】でも、邪気さえ祓ってしまえば――人間のように御飯は食べるらしく、カサネは勿論のこと――小柄で女の子のような体躯をしているシャオリンでさえもバクバクと御飯を食べている事に僕は驚きを隠せない。 ――日和叔父さんに、学校であった事を話すかどうか悩んでしまう。 そして、僕は取り敢えず日和叔父さんには話さないでおこうと結論を出した。夢月の食い違った発言は気にはなったものの――【影法師という怪異なるモノ】の存在が消え去った事は確かだと思ったからだ。 (あの照井という男は――もともと、いなかったんだ……それに日和叔父さんに余計な心配は――かけたくない) 「…………」 (ああ―――日和叔父さんの視線が痛い……で、でも……気にかけてくれて嬉しいなんて、とてもじゃないけど恥ずかしくて言えないよ) 「……日向、今夜は――日陰兄さんもいないし……久しぶりに二人で風呂に入るか?」 ――ガタンッ!! 「え、ええっ……ふ、二人……叔父さんと二人でお風呂にっ……!!?」 あまりの予想外な日和叔父さんの言葉を聞いて、思わず勢いよく椅子から立ち上がってしまい、その驚きのせいでひっくり返ってしまった裏声で尋ねてしまう。今までガツガツと御飯を食べていたカサネとシャオリンの箸が止まり、ポカーンとした顔で僕の方を見つめてくる。 「日向……オレと風呂に入るのが――そんなに嫌なのか?」 「ち、違っ……違うよ……嫌――じゃない……」 「そうか……それならば良かった――先に風呂に入っててくれ――オレはもう少ししたら行く」 ぶん、ぶんと大げさに首を左右に振って必死で否定する僕に少し訝しげな表情を浮かべていた日和叔父さんだったが――その後、久しぶりに見た笑顔になり――僕はまたしても、日和叔父さんにポーッと見惚れてしまうのだった。

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