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第41話

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 「あっ……カサネ―――さっき、その学校で怪異に襲われた時に……アドバイスくれて…あ、ありがとう……」 「アドバイス……?」 「え、だって……カサネが教えてくれたでしょ――僕に童謡を歌えって……言ってくれたじゃないか」 父さんを除く四人で、夕飯を食べてからカサネと二人きりで居間に残された時のこと――。風呂場へと向かう前に、礼を言った僕に対して訝しげに此方を見つめてくるカサネの態度に、またしても違和感を抱いてしまう。 「おいおい、日向ちゃん……アドバイスって何の事だ?確かに怪異なるモノに襲われている気配を感じとって、あのちみっこいのと保健室に向かったけどよ――ムカつく事に呪結界を張られて手も足も出せなかったぜ――ごめんな、役立たずで……」 しょんぼり、と落ち込んでる様子で僕に謝ってくるカサネに対して、そんな事は思ってから気にしないで、と謝り返す。すると、唐突にカサネは僕の半ズボンのポケットへと手を伸ばすと――そこの中に入っている御守りを取り出した 。 父さんが――僕に手渡してくれた御守りだ。 「……これ、御影守りだな。きっと、そのアドバイスっつーのも、日向ちゃんの危機を察知したこれが発してくれたんだろ――この御影守りの効力は送り主が――あるニンゲンを守りたいという想いによって発動するからな。そういや、これ……お前の父親のヒカゲが一生懸命作ってたぜ?これから肌身離さず――身に付けとけよ……それ、防水仕様にしといたから」 「えっ……父さんが……父さんが僕のために?カサネは……それを知ってたんだ――カサネ、ありがとう」 「ばーか……それは、お前の父親に言えよ……んじゃ、おやすみ……日向ちゃん」 ヒラ、ヒラと手を振りながら――ふざけた調子で部屋へと戻ろうとするカサネ。 今、この場にはいないものの――僕のために手作りの御影守りを手渡してくれた父さん。 僕はじんわりと暖かい感情で満たされ、カサネだけでなく父さんに対しても心の中で感謝の気持ちを述べると椅子から立ち上がり――急ぎ足で風呂場へと向かって行くのだった。

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