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第44話
「日向、一度……深呼吸しろ―――そして、オレの目を見つめろ」
「…………」
日和叔父さんの胸の中に抱きしめられながら、僕は小刻みに体を震わせつつも――彼の言う通り、すうっと息を吸い込んでから大きく吐いた。そして、恥ずかしいが――日和叔父さんの目を真っ直ぐに見つめる。
「お、叔父さん……僕、日和叔父さんの事が――大好き……だから、だから……父さんだけじゃなくて――僕の事も見て……それで、てるてる坊主の怪異の事なんて……全部忘れさせて?」
「……日向、てるてる坊主の怪異とやらの詳細を包み隠さず話すなら――お前の望む通りにしてやってもいいぞ――どうする?」
日和叔父さんの目を真っ直ぐ見つめた途端に僕の意思に反して口が開いてしまう。そして、【てるてる坊主の怪異】の詳細な事は勿論――言いたくもない告白じみた言葉を日和叔父さんへと告げてしまうのだ。
「いい子だ……日向――そんなお前に、オレからご褒美をあげよう……ああ、因みにお前が包み隠さず怪異の事を話してくれたお陰で――この場は【影法師という怪異なるモノ】の呪場ではなくなったぞ」
「ご、ご褒美……?僕が包み隠さず怪異について話したお陰……って、それ――どういう事?」
「今のお前は、それについて知らない方がいい……それに、いずれは―――いや、止めとこう。それよりも、お前はオレからのご褒美は欲しくはないのか?」
―――その、日和叔父さんの意味深な言葉について気になりつつも、今の僕にとっては彼からのご褒美を心の底では期待していたため激しく首を横に振って否定する。
「……そうだな、久しぶりに二人きりで風呂に入るんだ――互いに体を洗い合うというのは、どうだ?」
「そ、それ……それって……僕が――叔父さんの体に触っていいってこと!?叔父さんが――僕の体に触ってくれるってこと!?」
予想外すぎる日和叔父さんの提案を耳にして、思わず頬をつねって――これが夢ではない事を確認してしまう僕の慌てふためく様子などお構い無しに――日和叔父さんは体を洗う用の白いタオルに石鹸をつけてから、それを泡立てるとピタリと手を止めてしまう。
「……ど、どうしたの――叔父さん?」
「日向――そういえば……昔、アトピーだったな……クラスメイトから、からかわれてよく泣いていただろ?今は――大丈夫なのか?」
「あ、ああ――今はアトピーじゃなくなったけど……それでも、肌は弱い方だよ……でも、それがどうかした?」
僕がきょとんとしつつ、日和叔父さんへと答えると――そのまま、泡立てたタオルをシャワー脇の棚へと置いてしまう。
――そして、
「ひゃっ……く、くすぐったい……くすぐったいよ……叔父さんっ……!!」
「仕方がないだろう――お前は肌が弱いんだから……ほら、じっとしてろ」
日和叔父さんは、何の躊躇もなく手で石鹸を泡立てると――そのまま直に僕の肌に泡まみれの手を触れて優しい手つきで洗い始めるのだった。
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