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第48話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして――夏休み。
「あ、日向くん……それに――日陰さん。今日から宜しくお願いします」
「ああ……夢月くんか。こちらこそ、いつも日向がお世話になって――感謝してるよ。有難う――さあ、車に乗ってくれ」
「は、はい……」
夢月曰く――彼の実家は旧家の分家であり、その本家が【土忌野(ときの)村】という所にあるらしい。そして、そこは真っ青な海と深い緑に囲まれた山が存在する村らしい。
夢月とどうしても反りが合わない男の人が本家にいるから――僕達にも一緒に来て欲しかったんだ、と彼はいつも通り悪戯っぽい笑みを浮かべながら僕に囁いてきた。
しかし、それとは別に――ある事を目の当たりにしたせいで、僕の心の中でモヤモヤとした得たいの知れない感情が支配してしまう。
それは、夢月と――僕の父である日陰との会話のせいだった。普通であれば、何の事はない会話なのかもしれない。しかし、僕は夢月の表情を見て――彼が僕の父に対して、単なる親友の父親だという思い以外の――特別な感情を抱いているのだと察してしまった。
夢月の父さんを見る表情は、今は亡き僕の母が父さんを見つめる愛しそうな表情と――瓜二つなのだ。
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