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第50話
「ちょ、ちょっと……何でこんな女の子のスクール水着を夢月が持ってんの?」
「え~……だってさ、せっかく海に行くんだから気合い入れなくちゃ――日向くん、藤司さんをメロメロにしたいんでしょ?」
「はあ?な、何で……藤司さん?夢月、何か勘違いしてない!?僕は――別に藤司さんのことが好きな訳じゃ……ない……し――」
夢月が余りにも予想外な事をひそひそ声で囁きかけてきたため、思わずチラッと夢月の隣に座っている藤司さんを一瞥してしまうと――それに気付いたせいなのか彼も同様に僕の方へと視線を送ってきた。
因みに、運転手は日和叔父さんで――助手席に座っているのは父さんだ。そして、前にある横長シートにはカサネとシャオリンが座っていて後ろにある横長シートには僕・夢月・藤司さんの順で腰掛けている。
僕らのやり取りを見た藤司さんがくす、くすと可笑しそうに微笑んでいるため、気まずさから彼の方から顔を背ける。
「いいんじゃないかな……日向くんなら、その水着――似合いそうだし。それに、多分――あそこの海水場は人があまり来ないから――きっと大丈夫だよ……。ね、夢月くん?」
「うんうん、大丈夫……大丈夫!!それに、僕も着てあげるからさ……オソロイだよ?それにしても、海に入るの――楽しみだよね!!」
(というか、ちゃっかり二着持ってきてたのか――まったく、夢月ったら油断も隙もないんだから……まあ、夢月は――こういう奴だから――仕方ないか……)
恐らく、詳しい内容までは聞こえてはいないものの――夢月が僕に女の子のスクール水着を着てみろという内容は聞こえたのだろう。
夢月のアホみたいな発言にも、藤司さんのあっけらかんとした表情にも呆れながらも――僕は女の子のスクール水着を海で着る事に渋々了承するとーーそのまま目を瞑って眠りの世界へと入って行くのだった。
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