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第62話

今夜が特別なのか、それとも僕らが暮らしている村よりも更に山奥にある土忌野村特有だからなのか―――仰向けにされた僕の頭上にはキラキラと煌めく宝石のような星空が広がっている。 乱暴な男から組み敷かれ、頭の上で両腕を一纏めにされて拘束されてしまった体を好き勝手に弄ばれそうになっているという絶望的な状況だというのに、僕の目はダイヤモンドのように瞬く星空に見掘れてしまっていたのだ。 ――ぐにゅっ そして、何かの生き物のようにビクビクと震えつつ先っぽから僅かに白い液を噴出している異様に生暖かいモノが――希望を失ってしまって無気力になった僕の頬へグリグリと押し付けられた。その度に、生暖かな白い液が僕の顔を汚していき―――時々、半開きになっている口に入ってきて――えづきそうになってしまうのだ。 「おい、ボーッしてんじゃねえぞ――日向ちゃん……ほら、こっち見ろよ……せっかく、こいつで撮影してやってんだから――ああ、これを夢月の野郎とお前が大好きで堪らない叔父さんに見せてやるのも――いいかもな?ほら、このまま咥えろよ……その生意気な顔にだしてやるからよ」 カメラを構えながら、光という般若のように恐ろしい男が、白い液で少し汚れてしまった僕の耳元に囁きかけてくる。そして、無理やり片手で半開きになっていた僕の口をこじ開けて――興奮したせいで勃起し凶器となったモノを強引に押し込んできた。 その時、先程まで満天の星空に浮かんでいた満月が雲間に隠れて完全に見えなくなった。 その瞬間、先程までは綺麗だと感じていた宝石のように瞬いていた星達が獲物である僕を狙いながら容赦なく嘲笑う獣達の目のように感じて――余りの切なさからポロポロと涙を溢してしまう。 そんな僕の様子を嗜虐的に見つめて、ふっと笑みを浮かべてから生暖かな気持ち悪さしか感じられないナメクジのような舌で、自分の意思で止める事が出来ない僕の涙を舐めとるのだった。

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