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第67話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ―――ガチャッ…… 「あれ……シャオリン、何してんの? 」 【え……何って……このこに餌をあげてるんです……とても面白いんですよ……このこ……シャオの髪をパク、パク……パク、パク……って夢中になって食べてるんです】 海に行く準備をするために薫さんが割り当ててくれた自分の部屋に戻ってきた時――真っ先に目に飛び込んできたのは、美しい長い髪をぶちぶちと引きちぎり、夢月が飼おうといって持ってきた《忌髪魚》へ餌として与えているシャオリンの異様な姿だった。 ―――ぶち、ぶちっ…… しかし、髪を引きちぎっても痛みはないのか―――平然として、いやそれどころか笑顔を浮かべつつ愉快そうなシャオリンは尚も髪の毛を水槽内を優雅に泳ぐ《忌髪魚》へと与え続けている。 そして、引きちぎる度に―――シャオリンの髪は再生して美しい艶やかな長い黒髪を保っているのだが、流石に彼を止めようとした時とほぼ同時に部屋にカサネが入ってきた。 いつの間にか、既に水着を着て海に入る気満々だったが流石にカサネでさえも《忌髪魚》へ自分の髪の毛を餌として与えているシャオリンを見てギョッとしたらしく――慌てふためいてる様子でキョトンとしているシャオリンへと近付いた。 【ば、この馬鹿……小鈴……お前――何をしてんだよ!?】 【え……このこに餌をあげてるだけですよ――何を驚いているんですか?それと、小鈴って呼ばないでください――シャオリンの名はシャオリンです!!】 唐突なカサネの乱入によって――シャオリンはようやく《忌髪魚》に髪の毛を与える手をピタリと止めた。 「あ、あのさ―――カサネは行く気満々なのは分かったけど……シャオリンも僕らと一緒に海に行く?」 【ご、ごめんなさい……日向さん。シャオリンは行けません……センヤクがあるんです……カサネさんにお任せします】 ―――センヤクとは、先約の事なのだろうか。 少しだけシャオリンの言葉が気になったものの、部屋まで迎えにきてくれた夢月と父さん――それに日和叔父さんを待たせる訳にはいかないと思った僕は未だに水槽の中の《忌髪魚》を楽しそうに覗き込んでいるシャオリンをチラリと一瞥してから――他の皆と共に海岸まで向かっていくのだった。

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