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第68話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「日向くん……それ似合ってるよ!!やっぱり僕が思ったとおりだった」 「え、そ……そうかな……僕よりも夢月の方が似合ってると思うけど――そ、それよりさ……夢月、夢月って……その……僕の父さんの事をどう思ってるの?特別な感情込みで――好きだったりしないよね?」 海に着くなりスクール水着に着替えた僕と夢月は波うち際を二人で歩いていた。ざざぁ、ざざー……と響く波の音を聞きながら――僕はずっと心に引っ掛かっていた疑問を夢月に投げかけてみる。因みに、カサネは既に海に入っておりノリノリで泳ぎ回ってはしゃいでいるが、父さんと叔父さんは砂浜に立てたパラソルの下で僕らの様子を観察している。 「―――好き、大好き…………って――そう言ったら、どうする……なーんてね、親友の父親を特別に好きになる訳がないじゃん!!」 「えっと……そ、そうだよね……ごめん、変なことを聞いちゃって……じゃあ、海に入って泳ごう」 夢月の腕を引っ張ると―――共に真っ青に澄んだ海へと足を踏み入れて二人で競い合うかのように海の中を泳ぎ回るのだった。 ―――どのくらい夢月達と泳ぎ回ったのだろうか。 ふと、近くの岩にちょこんと置かれてある――海には似つかわしくないある物を見つけて、吸い寄せられるように無我夢中にそちらへと泳いでいく。 海には似つかわしくないある物――それは、何十体もの小さなお地蔵さんだったのだ。 と、唐突に―――何か柔らかい感触をしたモノが海の中からぐい、ぐいと僕の足を引っ張り――物凄い力で海の底へと僕を引きずり込もうとする。 恐る恐る海の中を確認してみると、そこには――真っ黒な小さな手が無数に僕の体に向かってひしめき合い引きずり込もうとしているのだ。赤ん坊のように小さな手にも関わらず、その力は凄まじく思わず近くにある岩にしがみついたが、そんなのは無駄のあがきで――あっという間に海の中へと引きずり込まれていくのだった。 海に引きずり込まれてしまう瞬間、心配そうに僕の方へと泳いでくるカサネと夢月の慌てふためいてる顔が―――見えた、ような気がした。

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